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~ワインを呑むとき、タバコは消すもの~

二人で退屈な純愛映画を観た後に入ったカフェ。

タバコの煙を燻らせながら彼は言う。

「そういやさ、付き合いはじめの頃はあんまり好きっていってくれなかったよね。」

彼の手からタバコを取り上げて、煙を吸い込む。

「そこまで好きってわけでもなかったからね。」

彼は少し目を見開き、驚いたような表情をつくったあとに、優しく笑う。

「ひどいな。泣いていい?」

そういって私からタバコを奪い返し、口にくわえる。

「今は好きよ。とても。」

「それはよかった。とても。」

店員がグラスのワインを運んでくる。

「ありがとうございます。」

そう言って彼は、タバコを消しグラスを手にする。

丁寧なオトコ。

「で、そんなに好きでもなかったってどういうこと?」

最後に吸い込んでいたんだろう。
煙を吐き出して彼は尋ねた。

「私ね。まだよく知らない相手に好きって言ったり、言われたりするとさ、それが熱ければ熱いほど冷めちゃうんだよね。よく知りもしないくせにって。さっきの映画にもそういうシーンがあったけど、ああゆうのみると冷めちゃうよね。」

「へぇ。でもたぶんあのシーン、映画的には見せ場なのに。」

彼は優しい表情のままで、わたしはその独特の余裕にも惹かれている。

「だったらさ、どうしておれとは付き合ったの?結構早い段階から好意は見せちゃってたはずだけど。」

「そうね。でも私しか見えないっていう盲目的な感じでもなかったでしょ?」

「そう?まあ、確かに視野は広い方だと思うけど。」

ずれているのか的確なのかよくわからないコメントも彼の魅力。

「なんだか勝手に燃え上がってるのとは違う不思議な温度感があって、そんなあなたと接するうちに、もっとあなたの事を知りたいって思うようになったんだと思う。」

彼は少し嬉しそうに笑う。

「あなたの事知りたいって響き、なんだかエロくていいね。知ってみた結果はどう?」

「言ったじゃない。とても好き。」

「嬉しいな。ありがとう。」

「結果じゃなくて現状の話だけど。」

「それわざわざ言わなくてもよくない?」

「そう?」

「で、もう十分におれの事はわかった?」

「ううん。あなたの事もっと知りたいし、私の事ももっと知って欲しいわ。」

「その響き、エロくていいね。」