『私はイスラム教徒でフェミニスト』

読了ニコニコ

 

 

 

今年は明治~昭和の女性史のほか、

西洋的でないものや

なじみのうすい文化や宗教に関する本も

読みたいと思っていました。

 

 

 

 

本の著者は

フランスのパリ近郊に診察室を開設し

セクソローグ(性科学医)で助産師であり

ラジオのパーソナリティも務める

イスラム教徒の女性。両親はモロッコ出身。

 

 

イスラムの聖典は何世紀にもわたって

男性の視点だけで読み解かれ

父権的な解釈がされてきたのであり、

本来は

男女の平等を語り

女性の性欲や快楽を好ましいものとし

多様性も認めるものである、と

著者はコーランを引用しながら解説します。

 

 

また

女性差別に読める文脈は、

イスラムが生まれた時代の状態により

そういう言い回しになったと説明し

私たちが生きているのは

七世紀ではない、として

ムスリムの規範を

時代に合わせて読み直しながら

それを普遍的な人権に結びつける

必要性を訴えます。

 

 

以前、キリスト教においても

フェミニスト神学やクィア神学

について書かれたものを

少し読んだことがありまして、

周縁化されてきた人々による

聖典の読み直しは興味深いところです。

 

 

 

 

そして

西洋的な言説や

著者へのバッシングに対して

フェミニストであってムスリムであることは

決して矛盾しないと言い、

”抑圧の象徴”とみられがちなスカーフを

信仰の大事なアイテムとして

著者は常に身に着けます。

 

 スカーフを抑圧の象徴としか見ないフェミニストがいるのは、とても残念だ。いったい何の権利があって、一握りの女性が他のすべての女性に代わって、正しい解放の仕方とやらを決められるのだろう。それこそ女性を子ども扱いし、自分では何も選択できない存在だと貶めてきた父権社会の図式と変わらない。

 誤解しないでほしいが、女性を従属させる道具としてスカーフを利用している国や地域があることは事実だし、それに対しては私も断固として闘う。

 

 

 

セクソローグ(性科学医)としての

著者の性に対する

向き合い方や考えも

とてもおもしろかったです。

 
 
 
 
「週刊読書人」編集部のvoicyで

栗田隆子さんによる書評が朗読されていました。

 

(約8分)

 

この本が気になっていたので

読む前に聞いてみて

やっぱりおもしろそう!と。

 

 

(voicy音声から一部抜粋)

『たしかにターリバーンが女子教育の保証や男女平等の思想を推進するかは正直疑問ではある。しかしとりわけアメリカや日本でターリバーンを悪魔化する視点の一部にはこの本のテーマの一つであるイスラムフォビア(イスラム教やムスリムに対する憎悪や偏見)が背景に存在しているのではないかと一度は自らに問いかけてもいいかもしれない。』

 

 

これ、

イスラム教にだけでなく

こういう面が他にも

日本の報道にはあるな、とも

思いました。