春という季節は、それまでの寒くてほの暗い冬からの開放感も手伝って、暖かくて明るい、幸せな季節という感じがします。
閉じこもっていた家から出たり、槌の下で眠っていた草の芽が顔をのぞかせたり、鳥が元気に飛び回ったり動物たちが行動を起こしたり・・・
わくわくする気持ちや、新しい気持ちが湧いてくる季節です。
一方、秋という季節は、これから寒い冬が来る前触れで、何となく物悲しい、人が恋しくなるような季節だと私はいつも感じています。
日が短くなり、木々の葉が色づいては落ち始め、花も少なくなり、夕日を見ると悲しい気持ちになるものです。
暑かった夏が終わり、季節は少しずつ秋、そして冬へ進んでいます。
9月までは残暑が厳しかった私の町にも、最近は秋の気配がそこらじゅうに漂っているように感じます。
特に、家を出るとすぐに香ってくる、キンモクセイの香り。
この香りがすると、かつて学生だった頃、運動会の練習に励んだ頃の記憶が香りと共によみがえってきて、懐かしい気持ちになります。
甘くて切ない香りだと、昔から思っていました。
小さい頃は花をたくさん取って水を入れた小瓶に浸し、水に香りを移して楽しんでいました。
小学生の頃から、キンモクセイの香りが好きだったのです。
同じような匂いでもう少し優しい香りのする、ギンモクセイがあります。
もっと香りが穏やかなヒイラギモクセイも。
実家にはギンモクセイとヒイラギモクセイがありました。
木のそばに来るとほのかに漂うこれらの香りが、私は大好きでした。
学校にしかなくて、運動会の季節になるとグラウンドにうっとうしいほど立ち込めていたキンモクセイの香り。
むせ返るような強い香りが、秋の訪れを嬉しそうに教えてくれていました。
今日、娘と自転車で出かけた時、ふいに香ってきたキンモクセイのおかげで、懐かしい季節のことを思い出し、秋の切なさをしみじみと感じたのでした。