以前に祖父のことを書きましたが、今日は祖母のことです。


祖母は、祖父が痴呆になってからというもの、

目に見えて、元気をなくしました。

元気がないというより、生きる希望をなくしたようでした。

祖母にとって祖父は、若い頃からずっと、何よりも心強い存在だったのです。

何をするにも、どこへ行くにも、祖母は祖父に付き従っていました。

しかし、それは、嫌々ついて行くと言うのではなくて、

心から祖父を信頼しているという感じでした。

小さい頃から、そんなふたりの姿を見て、私は、

祖母にとって祖父が、そして祖父にとってもそんな祖母が

お互いに大切な存在であることを知っていました。


先日、祖父は入院しました。

すぐに退院できると聞いていたのに、思っていたよりも期間は長く、

心配してお見舞いに行った私に、祖母は

「夜、ひとりで寝るのがこんなに寂しいと思わなかった」

と、本当に心細そうでした。

実際には祖母は娘や孫たちと暮らしているのに、それでも

祖父がいないことで、「ひとり」という気持ちになったのでしょう。

祖母にとって、祖父がいないことは、この上なく心細いのです。


祖母は、生きることに対して、やる気を失ったと言いました。

食事もわずかしか摂らず、大好きだったお菓子もほとんど手をつけず、

あんなに得意だった料理さえ、しなくなりました。

毎日をやっと過ごしていくという感じが、見ていてあまりにつらかったです。


どうしたら、以前のように陽気で楽天的な祖母にもどってくれるのか。

私には、どうしていいか分かりませんでした。


一緒に散歩をしながら、祖母は、

「私は本当にいい人と結婚した。幸せものだ。」

と繰り返し、祖父のことを想っているようでした。


遠い遠い昔に一緒になり、苦難の時代をともに生きてきた祖父母は

今、お互いに何を想い、どう生きようとしているのか。

彼らの4分の1程度しか生きていない私には、

あまりにも分からないこと、推し量れないことが多すぎて、

悔しくて、悲しかったです。

 

ふたりのことを、私は大事に思っているよ、と伝えたくて、

私は病院の祖父の手を握り、祖母と一緒に夕焼けの中を歩きました。


いつまでも元気でいてほしい。

ただそれだけが、私の願いです。