私が祖父母の家に引き取られて一年ぐらいになろうかと言う頃、母が迎えに来た。
どうして母が見付かったのか、見つけ出されたのかは分からないけれど、ある日突然やってきて祖父母と話をしていたかと思うと男の子を抱き上げて私に「行くよ」と言って来た。
祖父母は「今度こそ、ちゃんとするのよ」と私達を見送った。
私は団地の下に止めてあった見知らぬ車に乗るように母に言われて乗り込んだ。
何処に行くのか聞いたが覚えていない。
ただ昼間に出発した田舎道が段々と夜になるにつれて見慣れないビル群の景色に変わっていったこと、母が高速の出口を間違えたとかでずっと同じ場所を走っていたことは覚えている。
そうして夜遅くに見知らぬ建物に着いた、後でそれはマンションと言うと母に教えてもらった。
母は「静かにするのよ」後ろの席で寝ていてぐずる男の子をなだめながら私に「おいで」と言い私は母に付いてマンションに入ってエレベーターに乗る。
薄暗くて変な臭いのする建物。
何階かで止まって歩いて行く母の後ろをビクビクしながら付いて行った。
部屋は一番奥、今までの男の人達がいたような建物。
母が部屋のカギを開けると真っ暗な部屋が現れた、誰もいない。
母は部屋に入って電気を付けたけど一部屋しかない狭い部屋にベットがあるだけ、母はベットに男の子を下ろしてテレビを見始めた。
私はどうしていいか分からず取り合えず部屋に上がって男の子の横に座った。
どれくらい経ったのかウトウトしていた私はドアが開く音に驚いてそちらを見た。
ベットのすぐ横は、もう玄関なので見知らぬ男の人が入って来るのが直ぐに分かった。
男の人は「来たのか」と言い母は私に「パパよ」と言った。
パパと言われた男の人は「飯は?」とだけ母に言い母が「まだ」と答えると男の人は「食べに行くか」と直ぐに部屋を出て行ってしまった。
母は男の子を抱き上げて私に「靴はいて」とだけ言って同じように玄関を出てしまったので私も従った。
マンションを出て賑やかな街中を少し歩いて中華料理と書かれた店に男の人が入って行ったので母も私も従う。
そうして私は初めてラーメンとチャーハンを自分の家族だと言う人と食べた。
父親と言われる人は特に私に何かを言うでもなく店にあるテレビをずっと見ていたし、母も男の子にかかりきりで私には必要最低限な会話しかして来ないので、家族として賑やかに会話をしたわけでもない。
私からしたら大げさに言えば誘拐されて連れて行かれた先で、私があなたの父と母よと言われたぐらいの違和感しかなくて、初めて食べた料理が美味しかったとかどうかとか言うよりは祖父母の家には帰れるのかなと不安で仕方なかった。