23年前の事。

小学校4年生の5月、
ずっと伸ばしていた髪をばっさりショートに切った。

何も褒めてくれない母が唯一褒めてくれたもの。
それが私の髪の毛。
「長くて、黒くて綺麗な髪だね」って。

だから、髪の毛を手入れするのが大好きだった。
褒めてもらいたくて・・・。


でも、
「夏になるし、ばっさり切らせて」と母は言ってきた。

・・・え?
髪を切っちゃったら・・・何も褒めてもらえない。
もう、嫌いなの?

そう、心で必死に訴えてた。



「今から準備するから、そこに座って」
私の意見など聞かずに、どんどん準備を進めていく母。


証拠が欲しい。
私の髪の毛が長かった証拠。
またお母さんの心が離れていった時に
髪の毛が短かったら、もうお母さんが戻って来なくなっちゃう。
だから、長かった証拠が欲しい。

必死に考えた。


考えた私は、自分の髪の毛を必死で抜いた。


母が戻ってくるまでに
20~30本位抜いて、
宿題のノートの間にきれいに並べた。



母は楽しそうに、私の髪の毛を切っていく。

でも、大丈夫。
もしもの事があっても、ノートの間には
私の長い髪の毛があるから。


そう言い聞かせ、自分の気持ちを安心させてた。