生ごみの臭ふ夜明けのちちろ虫
地球ほど丸い西瓜を供えけり
武道家に貰ひし教へ秋扇
帰省子の去り虫の音のさんざめく
新涼や夢の名残の白々と
鶏頭やお氣に召さぬもままあらふ
白秋やキチガイ道をまっしぐら
黒揚羽ヒカリも息をのむほどに
秋めくや金魚のやうな雲浮かび
稲雀とつじょ頭の上ぐるり
瞑想を深めし風の法師蝉
水澄むや羽化できぬまま蝉の浮き
死角より飛び出す危険オニヤンマ
秋空や雲の織り成すタペストリー
天ぷらを揚げるため息秋の声
音も消へ花火の散りし遠い闇
百日紅そらの青さを深めける
秋風に白鷺の羽乱れけり
障子入れ居心地のよき部屋となり
露草やダイヤモンドを束の間に
自らを無き者として露光る
秋の薔薇こころの傷の疼くとき
早稲の田の一足早い金の波
日の翳る棚に苦瓜ぶら下がり
秋耕のあと種をまき水をやり
爽やかや道を譲るといふことは
水澄むやおたまじゃくしの尾のドレミ
おしいつく季節の移り変わるとき
肉体はタマシイを魅了する
法師蝉わたしは欲を離れたし
色欲の形に秋の汗光る
肉体をはみ出すものを秋日影
酒の肴は妻のゴーヤの佃煮ぞ
かなかなや私が死ぬといふことは
残されし者にぞ長き虫の夜
寂しさと帰り始めし燕かな
朝顔やわたくしの手を水の散り
低い雲高い雲あり秋の空
幸せは時に喪服に身を包む
台風や左回りの腰使ひ
台風の舌がとろりと肌を這ふ
万華鏡を生きる
死んで出直す
死の淵から見る
割り切れぬものに迷いてつくつくし
秋口や原始歩行でゆつくりと
月影に息をひそめし虫のあり
名を持たぬものにこそ我あり
コルセット尻の谷間へ秋の汗
朝顔や脳にスパークする光
朝の鵙今を生きよと猛りけり
目覚めれば澄みきる秋の中に居り
凄まじき草の勢ひ草の花
星飛ぶやカーマンラインなる境界
夜這い星茶碗の割れる音はじけ
玄関に灯の点りをる窓の夢
白露や取るに足らない身を捧ぐ
秋の薔薇すこし斜めの陽の中の
朝顔のひとり出に咲きひっそりと
ちちろ虫長女はチラと顔を見せ
虫の声したたるやうな肉欲を
あきのそら鳩の筋肉たくましき
情欲の炎鎮まる夜長かな
秋の蝶わたしは何処へ行くのやら
南無大悲観世音菩薩八月尽
ぶせふ




