パスカル・ロジェ監督の映画『マーダーズ』を鑑賞しました。

一見、ありがちな雰囲気ですが、ちょっと変わったストーリーで、なかなかのスプラッター作品でした。昔懐かしいスプラッター映画でいくと、『ホステル』がありますが、あれにも負けない感じではないでしょうか。でもそんなに気持ち悪く見れなかったのは、なぜ? 私のスプラッター感性が進化しちゃったということ?(;'∀') それとも、そんな感じの作品だったということ??( ;∀;)

少女を監禁して、さんざんいたぶる話なのですが、性的虐待はなく、肉体に与える苦痛を通じて霊的な覚醒を追求するという……より変質度が高い映画と言えるのかもしれません。


<ざっくりストーリー紹介>
監禁されて、拷問と虐待を受けていた少女リュシーが、どうにか自力で脱出し、その後に保護され、施設で暮らすようになりました。けれど、犯人逮捕には至らず、リュシーは心の傷を負ったまま、大人になっていきます。施設で仲良くなった少女アンナとは、大人になってからも交流が続いていたようです。あるとき、リュシーが犯人の住居を見つけ、復讐に向かいます。犯人家族を殺害して、アンナを呼び、呼ばれたアンナは驚愕し、リュシーが精神的におかしいのではと疑いました。けれどここから、さらにおぞましい組織的な犯罪が見えてくるのです。











<ここからはネタバレあり!>
その犯罪組織は、新興宗教団体でした。拷問を受けた聖人が処刑されて殉教することが背景にある宗教のようです。度重なる拷問に耐えうる人は特別な存在で、聖人のごとく、生きながらにしてあの世を見て、そのメッセージを受けると信じているのでしょう。その聖人役の適任者とされてしまったのが、リュシーだったのです。タイトルの『マーダーズ』は、”Martyrs”。「殉教者」ですからね!
……と、ネタバレはここまでにしておきましょうか。笑 あとはぜひ、ご覧になってください。珍しい異色作品なので、ご覧になれば、それなりに印象が残るのではと思います。

ちなみに、拷問はかなりむごいことをひと通りしている感じでした。あれでは死んでしまうよ!と、思うことが、手を変え品を変えて行われるけれど、生きようとする意志の強いリュシーは、それに負けることなく踏ん張ります。だから、特別な人材として選ばれてしまったのです( ;∀;)


<感想>
殉教者と言いながら、リュシーはその宗教を信仰していないというところが最大のミソ! リュシーを無理矢理殉教させようとしていないで、信じ込んでいる者を順に拷問して、適任者を見つけるべきです! というツッコミが。

霊的な覚醒から何かを得ようとするなら、自分でやりなさい! 自らを痛めつけて覚醒するがいい。人の身体を通じて、痛みなくして何かを得ようとしている限り、何も得るものはないでしょう。という、憤りを感じました。

この物語は、クレイジーな宗教観で繰り広げられたイジメ(拷問=苦痛)でしたが、現代の一般社会でも、似たようなことは十分に行われていると思います。嫌がらせをしたり、精神的・肉体的な苦痛を集団で与えて、死に追いやる事件がありますよね。あれは、『マーダーズ』で行われていたことと同じことではないかとも思えます。バーチャルが根付いたネット時代は、自分以外の第三者を通じてのバーチャル体験を求めるのかもしれません。ほんとうに嘆かわしい。自分の人生は自分で生きろ! 他者を使うな!

ところで、スプラッターなら、『ソウ』シリーズがエグいですね。シチュエーションから、方法まで、想像を超えた恐怖が展開されています。あれは気持ちが悪かった。そして、全シリーズを見終えるまで途中でやめられなかった……(;'∀')