三月十一日。
日本中が忘れることのない日。
東北地方大震災から、一年。
わたしにとっては、
それよりも前から、命を想う日。
最愛の弟がこの世を自ら去った日。
三月十一日。
生きていたなら、30歳。
どんなオヤジになってるだろうと、
よく想像します。
いまだに、思い出さない日はない。
誰かが亡くなると、まず、
声から忘れるらしいのですが、
わたしは鮮明に鮮明に覚えています。
あんなに愛していた子のすべてを、
忘れることなど絶対にない。
弟の「死」自体は、私も含め、
家族はずいぶん早くに乗り越えた。
まわりの人の気の使い方が時々、
長すぎて疎ましく感じたが、
「当事者」は、まわりが思うほど、
弱くはないのだなと、思いました。
わたしは弟の死をきっかけに、
自分を改めることが出来ました。
今もずっと日々それは続いています。
もしも
毎日毎日
ひたすら泣き続けたら
彼が戻って来るというなら
私も家族も
なにもせず泣き続けるよ
でもそんなことは、ないのだと。
信じたくないが受け入れました。
すぐに。
母を想う。
わたしも母になり、
「もしも自分が同じ立場になったら」
と想像しました。
自分の体に別の生命が宿り、
重くなってゆくからだをいたわり、
まだかまだかと心待ちにし、
とてつもない苦しみを越えて、
この世に産み出した我が子。
どうか健やかにと願いながら、
毎日毎日毎日共に生きながら、
愛と氣を注ぎ続けて、
素敵な大人になるようにと。
どんなパートナーと出会い、
どんな未来を、
この子は築いてゆくのかしらと。
楽しみにして、
自分も子も、年を重ねてゆく。
共にありながら。
そんな血を分けた最愛の人に、
まさか先立たれようとは、
誰が想像するでしょうか。
そう思えば思うほどに、
わたしは母の強さを尊敬します。
生きるということ。
それは喜びであるはずです。
しかし人は必ず死にます。
死をいつも意識して暮らしては、
生きる意味さえ見失うことも。
だから多くの人が、
「生への不安」を感じるような、
社会であってはならないと感じます。
必要ないものは必要ない。
それが何を指すかはあえて、
書きませんが。
弟が死んで、
もう二度と今世では会えないと、
わかればわかるほど、
しばらくは「自責の念」ばかりでした。
もしあの時に会っていたら。
もしあの言葉をかけていたら。
あんなこと言わなければよかった。
あんな態度取らなければよかった。
もっとそばにいればよかった。
もっとたくさんの、
時間を共に過ごせばよかった。
本当に愛しているひとに、
「愛しているよ」と言うのは、
とても照れっぽい。
本当に大切な人に、
「いつもありがとう」と言うのは、
つい忘れがちになる。
身近な相手ほど、
感情まで共有しているような、
せんな感覚になって、
「言わなくてもわかってるだろう」
そう生きてしまいがちになる。
でも。
愛しているひとに、
愛してるって言えるのは、
抱きしめられるのは、
体温を感じられるのは、
どうでもいい会話で笑い合えるのは、
そこに、いるからなんだよね。
せわしなく過ぎる日々に、
自分をどれだけ埋められても、
思い出す日であって欲しい。
三月十一日。
「当たり前」になっていく、
自分が生きているという奇跡。
消えていった尊い命からのバトン。
生きているのではなく、
生かされているという今を。
自分を改めることが出来た時、
世界はかならず変わるのです。
ひとりひとりの手で、
ひとりひとりの世界が、
変わるのです。
それが無限にリンクして、
世の中は自分が変わったあとにしか、
変わらないのです。
世の中を変えるのではなく、
自分を変えて、
そして世の中が、変わるのです。
究極に自分を大事にすること。
他人はいいから、
まず徹底的に自分に目を向けて、
自分を愛すること。
それがもし、あの頃のわたしに、
わかっていたとしたら、
間違いなく、弟は今も、
生きていると確信出来ます。
自分を心底愛することだけが、
他への本当の愛にも変わり、
不協和が消え調和するのです。
わたしのきっかけとなってくれた、
弟と、
この国のきっかけとなって下さった、
たくさんの尊い方へ、
魂からの愛を込めて。
わたしは、わたしでよかった。
これを読んでくださっている、
あなたが、あなたでよかった。
この国に、
「こんな時代」と呼ばれる時代に、
こうして生きている意味を、
たくさんの人が、想う日に感謝。
これからずっと、
前を向いて生きるということ。
難しいことだと思う日々もある。
努力がより必要になることもある。
嘆く前に、投げ出す前に、
諦める前に、責める前に、
「愛してるよ」
「大好きよ」
「大切に思ってるよ」
「ずっと味方だよ」
「きっと大丈夫だよ」
「わたしがいるよ」
「いてくれてありがとう」
「そんなあなたを誇りにおもう」
そういうような、
愛を伝え合うようなことから、
はじめていけばいいのだと、
わたしは心底、おもいます。
未来はかならず明るいもの。
そう信じる人の未来はかならず。
だからこそ、
わたしは今を生きています。
あなたと。この星のこの国で。
ぜんぶ読んでくれてありがとう。
ありがとうございます。
✡理紗✡