「私は、もう死ぬんだわ・・・」

とある病院の一室で
こんな事を呟く
一人の少女がいた。

「もう!
またそんな事言う~。
そんな事言ってないで
気をしっかり持って!」

と、少女を励ます
もう一人の少女。
友達のAである。

「私、聞いちゃったの。
お父さんとお母さんが
話してるのを。
もう、そんなに長くは
生きられないんだって・・・」

「そんなの気にしないで!
もっと楽しい事話そうよ!」
Aは一生懸命に励ますが、
少女は続ける。

「死ぬのよ。私は。
あぁ、鳥に生まれたかった。あの大空を、自分の力で
飛び回れたら!どんなに
気持ちいいかしら!」

「でも、私は人間に
生まれてしまったのよ。
そして、もうすぐ
私の短い一生は終わるの。」

Aは少し沈黙した後、
こう言った。
「・・・その願い
私が叶えてあげる!」

「え・・・!?」
死を覚悟した少女でさえ
その言葉には驚いた。

「鳥になりたいんでしょ!
叶えてあげるわよ!私が!
絶対に!!」

それから程なくして
少女は姿を消した。
"死んだ"という意味
ではなく、"姿を消した"
のである。

少女の両親は警察や
マスコミに協力を要請し、
必死に捜索したが
少女は見つからなかった。

そんなある日、両親は
Aの家を訪ねることにした。

少女が死んで、
自分達と同じくらい
悲しんでいるだろうと。

Aの家に向かう途中、
「確か、Aちゃんの
お父さんは単身赴任中とか言ってたっけな。」
少女の父は言った。

「それで、
Aちゃんを養うために
お母さんが遅くまで
仕事してるらしいわよ。」

「そこに友達の死・・・
さぞ淋しい思いを
してるだろうな。」

Aの家に着くと
Aが、二階の窓から
カラスに餌をやっている。

「お~い。Aちゃ~ん。
カラスに餌なんかあげちゃ
寄り付くようになっ・・・」

少女の父は言葉を失った。

Aが手に持っているのは、
小さな"手"だった・・・

少女の両親は、ハッと
顔を見合わせた。
「まさか・・・」と。

考え過ぎであって欲しい。そう思いながら
少女の両親は
壊れるかという程の勢いで玄関を開け、
二階へ駆け上がった。

そして、噛み付くように
Aを問いただした。
「今!カラスに何を!
何をあげてたんだ!?
まさか!まさか!!」

すると、Aは微笑みながら
「そうよ。」と、言った。

「あの子はね、鳥に
生まれたかったんだって。
だから私があの子の願いを叶えてあげたの。
あの子は鳥になったのよ!」

少女の両親は
なんで・・・なんで・・・
と、繰り返すばかりだった。

そう。
少女は鳥になったのだ。

鳥の餌となる事で
鳥の血となり肉となり
鳥自身となったのだ。

色鮮やかな夕焼けの空に
一匹のカラスが
小さな小さな手をくわえて飛び立った・・・
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