近未来古典小説「やみのなか」最終回 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「そうか、それは素晴らしい決断だ!
君の成長を誇りに思う…。」

最期は充電機能や運動機能まで麻痺したが、精一杯の笑顔で私と私の決断を祝福してくれた。

半年に及ぶグレースさんの闘病記録は膨大なデータを収集出来た。
今の時代でこそ特効薬は発明されなかったが、これから生産される未来のアンドロイド達が、グレースさんの犠牲の上に安心して人間に仕えられる世界である事を望むばかりです。

今、長秋様と直哉は地下室を焼却処分している。
重く冷たい金属となってしまった彼女の肉体とともに。

長秋様と直哉は涙を堪え、無言で火柱を見つめていた。
妹の樹乃様は涙を流しながら両手いっぱいの花束を抱え…。

「アンドロイドが火葬なんておかしいよ…。グレースさんは庭師型ロボットだったんだから、たくさんのお花に囲まれた方が喜ぶよ。火葬じゃなくて花葬だよ…。」

****

「ブリジット、君の尽力には感謝している。
グレースの件は悲しいが、この研究を続けることが…。」

「長秋様、その事でお話が…。」

「わかった。柿本も呼ぼうか?」

「はい、お願いします。」

「長秋様、誠に勝手ではございますが、本日を持ちまして私にお暇を与えくださいませ。」

「自分の道が決まったんだね。」

「人間の医師である長秋様の助手として過ごす未来も大変魅力的でした。
ですが私は、世界初のアンドロイド治療するアンドロイドの医師になりたいのです!」

「俺みたいなロボット工学者の助手じゃ駄目かい?」

「アンドロイドである私が自らの意思で、自ら助かりたがるアンドロイドを治してあげたいのです。
修理や改造とはまた違う、日常のケアをサポート出来るアンドロイドの医師…理想は…そうですね…私が経験したような悩み、苦しみを軽減出来るような精神科医になりたいです。
その為にはソフト面、ハード面ともに膨大な増強が必要なのは十分に覚悟しています!」

「アンドロイドがアンドロイドを治す時代か。俺達も必要なくりそうだな。」

「わかった、君はもう自由だ。僕はもう主人ではない。」

「私の主としての長秋様には感謝しています。
ですが私は一人の男性として情熱を傾けてくれた、直哉のお気持ちに応えたいのです。
本当にありがとうございます。
この決断に至ることが出来たのは、私を人間扱いし、主従ではなく一人の女性として同じ目線で大切にしてくれた直哉のおかげです。
あなたを愛しています。」(完)