※セクサロイド…セックス・アンドロイドの略称であり俗称。
文字どおり、性接待を目的にしたアンドロイドである。
事の程度は諸外国の法律により多少の違いはあるが、個体数的には世界で最も種類の多いアンドロイド。
道徳や倫理観から男性型の兵隊ロボットは製造を禁止されているのに、世界中にホステスロボットやコンパニオンロボットの名前で大量生産されているのは人間の最も人間らしい所以。
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「さぁ、長秋様。
私は完璧なアンドロイドです。
どうぞ私自身を存分に堪能してくださいませ。」
驚くほど弾力のあるキャサリンの肉体。
ほんの数ヶ月前とは大違いだ。
「これが…人間の手を離れたアンドロイドの行く末か…。
ソフト面を自分で判断してインストールするだけでなく、肉体の改造というハード面にまで手を出すことを決断するとは…。」
自分の責任だと覚悟と諦めの念が長秋を襲った。
キャサリンは文字どおり「情に訴えて」きた。
主である僕が再び屋敷に戻って来た時は、自分がお払い箱になるのは十分に予測していたからだ。
そして今日という日の為に、着々と自らを改造し続けたのだ。
僕を自らの肉体の快楽に溺れさせれば、安易に廃棄出来ないとタカをくくって!
彼女は最初から許していなかったのだ。自分より旧型のブリジットだけを連れて屋敷を出た僕を。
そしてキャサリンは知っている。
僕が抵抗しようとも、アンドロイドがフルパワーを出せば、人間の男一人を押さえつけることくらい片手出来るということを。
いいさ、娼婦に身を堕としたアンドロイドを抱いたところで、僕の崇高な研究とその成果には何の落ち度もないさ。
「ふん、好きにするがいいさ!だが、君なんかと交わるのは今日が最初で最後だ!」
上に乗られたキャサリンの質量は、人間基準ではかなりの重さだったが、柔らかな肌が理性を吹き飛ばそうとする。
だが冷静さと憤りの両方を貫けたのは、僕を見下ろすその表情と言葉だった。
「抵抗をしないのは賢明な判断でございます。
お父上もさぞお喜びでしょう。」
そう…キャサリンは僕の為に働いていなかった。
今さら解ってたはずなのに…。
キャサリンは亡き父の為に働き、亡き父の為だけに僕と僕のブリジットを排除し続けようとしたのだった。
重なり、今まさに交わろうとするその時、
「やめろ!」
と僕は叫んだ。
刹那、鉄パイプを振りかざし、キャサリンを殴打したのは庭師のグレースだった。
続