「き、貴様!そこを動くな!!我が塾生に何をした!この狼藉者!」
土曜日の午後。
殆どの塾生は実家に帰省するか寮でのんびり過ごしていた最中、事件は起きた。
ガーゴイルの鳥羽かごめは人間の体育教師である大月教子から柔道教わっていた。
その時、中庭から聞こえた悲鳴に駆けつけて見れば、塾生の一人が気を失い倒れていた。
そこに立ち尽くす若い男性は…
「ち、違う!僕は何もしていない!
ここの塾長って人に届け物を持ってきたんだ!
彼女には道案内を頼んだだけだ!」
必死に弁明をする若者。
自分の姿を見たら大声を出して倒れたと繰り返すだけだった。
「師匠!ここは私に任せて、この子を保健室へ。
師匠は私の柔道の師匠ですが、この者が妖力を解放したら私だけで師匠を護れる保障はありません!」
「そ、そうね。
とにかくこの子を治美先生の所に連れていって、真理亜塾長かすへ子教頭を呼んでくるわ!」
「ちょ、ちょっと!
塾長さんの所に行くなら、僕も案内してよ!」
「貴様!まだ自分の立場がわからんか!
男子禁制のこの萌慎艶戯塾に単身乗り込むとは、黄昏羅漢塾の塾生にしてはその根性だけは誉めてやる!」
啖呵を切ると同時に変化を解いた鳥羽かごめ。
途端に背中から翼が生え、その翼の間にから剣の鞘を抜き…。
「我が愛剣の錆びにしてくれようぞ…!さぁ、貴様も変化を解け。
真理亜塾長には不覚を取ったが、貴様程度が妖力を解放しようが遅れはせぬ!」
「う、うわぁ鳥人間だ!
妖力とか変化とかって何のことですか!?
それに僕はまだ黄昏羅漢塾の塾生じゃないよ!
ここの塾長さんにこのDVDを届けたら、入塾を許可するって、黄昏羅漢塾の塾長に言われたんだ!」
「何…?」
「鳥羽かごめさん、剣を納めなさい。
理由はどうあれ、変化を解いては駄目よ。」
「塾長…!」
「私が萌慎艶戯塾塾長三好真理亜である!
羅漢塾の塾長が私宛にDVDを?
それも人間の男の子を使うなんて、相変わらずの悪趣味ね。」
「に、人間?き、君は本当に人間なのか?そう言えば何処かで…。」
「だからそう言ってるじゃないですか!貴女が塾長?
じゃあ、DVDは確かに渡しましたので、僕はこれで…。」
「待ちなさい。
せっかくだからお茶でも飲んできなさい、赤峰摩亜耶さんの彼氏さん♪」
「摩亜耶を知ってるんですか!?」
「あら、当たりだった?
なら話が早いわ♪
鳥羽さん貴女も来なさい」