(ミラ)「痛~い!」
(かごめ)「くっ…まさかここまでとは…。」
力の差は歴然だった。
三人の妖怪少女も、「人間」三好真理亜の前に全く歯が立たなかった。
単独で突撃すれば投げ飛ばされ、束になってかかれば同士討ちをするだけだった。
その圧倒的な力の差に、真っ先に気付いたのは、体育教師として武道の心得のある大月教子だった。
「嘘…信じられない…。三好真理亜塾長は、自分の立ってる場所から仁王立ちしたまま、一歩も動いてないわ…。」
「流石は体育の大月『教官』。その辺りを是非とも私に代わって可愛い塾生達に指導してほしいものですわ。
妖力さえ強ければ勝てると思ってる塾生がまだまだ多くて…。
人間を過少評価にして人間社会に出たら痛い目に遭うわよ!」
傍観してる五人の女性に話しかける姿は、真理亜がわざと作った隙に見えた。
それを見逃さなかったのは、三人のリーダー格、目暮樹里亜だった。
「弱い人間が考えた柔術なんか、私の身体を最大限に硬くした拳にには叶わないんだから!
必殺、メタルナックル!」
「危ない!」
完全に真理亜を捕らえたかに見えた瞬間、その姿は残像となり、伸び切った右腕を掴まれ、一本背負いで樹里亜の身体が宙を舞う!
「あぅぅ…。痛~い…。」
「その硬くした身体を地面に叩きつけられたら衝撃も倍増でしょう?
そして…。」
「樹里亜さん!」
倒れた樹里亜を見るなり立ち上がり、遂に剣を抜いて斬りかかるかごめ!
だが…。
「かごめさん、地上では貴女のその翼が邪魔になるわ!
地上スレスレを滑空する技を身につけたら貴女は素晴らしい剣士になるわ…。
さぁ、そろそろ本当の理由を聞かせて。
因幡ミラさんの弟に薬を届けたいだけじゃないでしょう?」
「わ、私は一号生筆頭の樹里亜さんにつき従うのみであります!」
「そう、忠誠心の強いガーゴイルらしい答えだけど、貴女みたいに盲目的に人間社会に飛び出した妖怪の少女が、まともな職にも就けず、言葉巧みに騙されて、最後はMV女優として売り飛ばされるのよ!」
『MV女優?』
五人の女性が一斉に反応する。
「妖怪の女の子が人間界で『妖怪であること』を暴露するのは天界と妖精界で違法よ。
ほら、バラエティーの特番であるでしょう?『本当に映っちゃった』ってオカルト番組が…。」
「Mはモンスターの意味?」
「以前はね。最近は差別反対の声からミステリアス女優って呼んでるわ♪」
続