「本日のご来店誠にありがとうございます!
従業員一同、またのご来店をお待ちしております。」
ロビン店長が深々と御辞儀して、三好塾長以下、私達を見送る。
「じゃあ、皆行くわよ!」
五人の女性は、三好塾長の後に付いて喫茶ロビンフッドの扉を開けた。
そう、店の出入口だ。
その出入口は間違いなく東京の四谷に店を構えていたはずだ。
だから当然店に来れたのだが…。
「ここよ。」
ドアを開けた塾長が優しく笑顔で振り向く。
その背景には…。
「……。」
「……。」
『どこよここはーー??!!』
だだっ広く拡がるグランド。
そびれ立ち建物。
威厳ありそうな銅像。
美しき庭園に噴水。
「ここが貴女達が教鞭を執ることになる『萌慎艶戯塾』正門前よ。
あの右手奥が塾生寮。
その奥が教官寮よ」
「いや、そうじゃなくて簡単に時空を越えちゃったんですけど…?」
「ロビン店長の計らいで、暫くはこの正門前でも営業をしてくれるそうよ。
緊急の時は、お店の扉から東京に戻れるはずよ。」
「どこ○もドアなの?ド○えもんの世界なの?」
「寧ろ、ハ○ルの動く城かな?」
「でも、ロビン店長は気まぐれだから、いつも店があるとは限らないわね。どちらかと言えば『どこかにドア』ね。」
「さらっと怖いこと言うなー!」
「いや…、皆様…この現実をすんなり受け入れてますし…。」
「ゆかり、考えたら負けだ。」
(うん、そうだね。
ここは私が研究してきたことなんか全く役に立たない世界。
だから私は来た。怪物じゃなくて『神獣』として崇められた龍に会いに来た。
それは人間以上の叡知と言葉を操る龍だ。)
***
「三好塾長、あの大きな壁は何ですか?」
「塾生の間では『嘆きの壁』って呼ばれてるわ。
壁の向こう側に行くのは厳禁よ。
それだけは貴女達も塾生達に徹底させてね。」
それは「何も聞くな」という真理亜からの無言の威圧にも見えた。
「まずは教官室で他の教官を紹介するわ。
皆、人間と人間社会に敬意を持ってくれて…。」
真理亜が歩きながら説明する途中、それは突然の遭遇だった。
「お待ちなさい!」
年配…というより「可愛いお婆ちゃん」が三人の女塾生?を追いかけるコメディタッチな状況。
だけど…。
「壁を乗り越えるのは私、一号生教官・新井クネが許しません!」
女性教官の指先から蜘蛛の糸が飛び出すが、女塾生も手の平からの水流で迎撃する!
続