「好きな季節は何時ですか?」
小学二年生の時の担任がクラスメート全員に問いかけた。
音楽の授業で
「♪春を愛する人は~♪」
で始まる曲を習っていた時だった。
春が好きな女子は、ぽかぽかした季節を好む女子達だった。
「春休みは宿題が無いから」を理由にするのは知恵の回る男子だった。
夏が好きな男女の理由はズバリ「夏休み」それ以上何の説明も要らない外で身体を動かすことが大好きな男女だった。
冬はお正月とお年玉を好む現実主義な男女と、雪合戦を好む男の子と、雪を愛する女の子達だった。
でも…秋が好きだと挙手したのはクラスで唯一、僕だけだった。
「秋休みは無いから」
これ以上の理由はなかった。
みんな四季の中のワーストは不動だった。
残り三つからどれを選ぶかだけだった。
歌詞はこう続く
春を愛する人は
心清き人
(中略)の様な僕の友達
(中略の部分の歌詞は記憶にございません)
夏を愛する人は
心広き人
~の様な僕の父親
冬を愛する人は
心強き人
~の様な僕の母親
そして順番が前後しましたが、
秋を愛する人は
心深き人
~の様な僕の恋人
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はい、もう因果律なんてたかが8才の少年にはどうでもいいんです。
クラスで唯一挙手したのが男子で、「僕の恋人」なんて歌詞があったら散々笑い者にされますよ。当然です。こんな面白いネタはない。
そして「心が深い」ってなんだよ?
「強い」、「広い」、「清らか」は理解出来ても、「心が深い」ってそもそも褒め言葉かも怪しいわ!
いやね、クラス内のポジションが極めて危うい私には格好の材料でしたよ。幼少の頃からどうせ戦隊ヒーローごっこは「万年ピンク担当」でしたから。
そんなこんなでクラス内のポジションをこれ以上危険にしたくなかったから、本当に秋を愛した理由は数少ない親友にも、担任にも言えませんでした。
「銀杏と紅葉の色が変わる時だから」
なんて、とてもとても…。
最後にアニメ・メジャーのテーマ曲にもなったロードオブメジャーさんの歌詞を
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描いた夢と
ここにある現在
二つの景色
見比べても
形を変えて
ここのあるのは
確かな
一つの夢
過ぎゆく春を
惜しみながらも
僕らの幕開けた
あの夏
色んなことが
わかりはじめた
秋と
何かを失った冬
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心深き人だから、今も昔も人間と哲学を愛しています。
(終わり)