「おい、秋成!本気か?
ここまで来た状況で、お前が僕を拒否るなんてあり得ないだろ!
僕はどんな困難があろうとも秋成の全てを丸ごと受け止めてずっと二人で…。」
「慎、その気持ちは本当にありがとう。
でも…俺と慎は二遊間コンビとして最高のプレイを披露する…。それだけだろう?」
「解ってるよ!それ、僕が一番悩み続けた所で、何で秋成発信で言われなきゃならないんだよ!
ちょ、ちょっと待って!落ち着こう、一旦落ち着こう。
じゃ、じゃあ秋成が僕に何度も繰り返した『誰を愛してるかは慎が一番解ってるだろう?』って言葉は?」
「俺は最初から、亡き隼人さんの想いと、実の姉の幸せを願ってるだけだが?慎なら俺の気持ちを解ってくれてると思ってたよ。」
「解らないよ!で、でも、あの試合で、僕が秋成をバッターボックスに送り出す為にしたことは …。」
「試合…?そんな昔の事は憶えてないなあ?」
「マジかよ!じゃ、じゃあ、僕と秋成は明日になればただのチームメイトでしか…。」
「明日?そんな先のことはわからないなあ?」
「何でだよ!僕は、僕は秋成の為なら世界中を敵に回してでも、僕だけは秋成の傍に…って覚悟したのに!生まれて初めての恋も諦めようって決めたのに!
秋成、はっきり言って!僕の何処がいけないんだ!?」
「俺達…男同士だし…。」
「今さらそこかい!」
「金城くん、『諦めたらそこで試合終了ですよ』」
「いや、二本松先生、ここで安西先生の物まねされても…。」
「いえいえ、大事な話ですよ。
私は今年44歳になりますが、未だに独りですから。」
(のの香)「え?独身なんて今の時代普通じゃないですか?」
(早乙女)「私も別に結婚には…。」
「いいえ、そういう意味ではなく、今まで本当に『独り』なんですよ。この怖さが解りますか?」
(男子全員の心の叫び)「怖ええ~!!ガチで怖ええよ。山大付属より怖ええよ。は、早く彼女が欲しいです…。」
(のの香)「みんなどうしたんですか?」
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あたしって性格悪いなぁ。
こんな状況で慎太郎が「初めての恋を諦めようとした」にドキッとしちゃうなんて…。
玉野は…大好きな慎太郎の為にわざと距離を置いたんだね。
うん、私ですよね?私しか居ないですよねぇ?慎太郎にはこの東瀬美由紀しか居ませんから!
うん、確かに『諦めたらそこで試合終了』だわ。
大丈夫よ、慎太郎。私がリハビリしてあげる。