私達に委ねられた二重殺(僕許30.5話) | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

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このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
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七回表
一死一・三塁
貴川西1-2山大付属

打順は九番の慎太郎。
同点、または逆転のお膳立ては玉野によって仕立てられたけど…。

「ットライク!」

駄目だ…。
いつもの慎太郎に戻ってるわ。
コントロールも度胸ない相手の二番手ピッチャーも問題だけど、玉野の「闇」と完全にシンクロしちゃってる慎太郎に適時打は無理だわ…。

馬鹿ね、慎太郎。
あんたが一緒に悲しんだって玉野を本当に喜ばすことは出来ないんだよ…。
****

間違いない。
玉野秋成は自分の師匠にてお姉さんの婚約者だった「隼人さん」に何か特別な感情を抱いてる。

お手洗いで私にバケツの水をかけたり、スライディングして井坂先輩の足を削ったり、のの香にいきなりキスしたり…。

目的の為なら手段を選ばない男だと思ってた。
ピッチャーライナーで投手の顔面をわざと狙うなんて、玉野ならやるかもしれない…。
でも…ホームインした時に慎太郎とハイタッチどころか、目線も合わせずに無視したのは玉野らしくない。
都倉投手に配慮して過度に喜ばないとかそんなのじゃない…。

上手く言えないけど…玉野自身が慎太郎に触れてはいけないって勝手に思い込んだ結果だ…。
慎太郎もそれをわかってるから打席で全く覇気がない。
玉野のは明らかに自分で苦しんでる。
あのピッチャー返しとお姉さんとフィアンセさんと何か関係があるとしか思えない!
あくまで私は玉野のお姉さんから私が聞いた話の範囲だけど…。
でも…慎太郎、ホントにそれでいいの?
玉野の哀しみにあんたまで呑まれたらそれで解決なの?

「ボールスリー」

両者とも決め手を欠いた拙守拙攻。世紀の名勝負が一気に大凡戦だ。
駄目よ、私はこんなメンバーをサポートしたくてマネージャーやってるんじゃない!
腹が立った私はベンチの最前列まで飛び出し

「何やってんのよ慎太郎!
ここで四球で歩いたって、玉野も都倉さんも喜ばないのよ!
あんたで決めるのよ!!
亡霊を打ち砕いてください!って玉野がお願いしてるのがわかんないのー!」

「おい、君!
この試合は警告試合として…。」

「うっさいわね!迷える球児を救えなくて何が甲子園よ!」

「やめろ東瀬!
ありがとう。
もう迷わない。
僕は打つ。
東瀬も秋成も大好きな仲間だから。」

慎太郎…。

「金城くーん!打ってください!玉野君に踊らされてるなら踊ればいいじゃないですかー!」

スタンドからのの香の黄色い声援だ