「俺が誰を一番愛してるかは、慎が一番わかってるだろう?」
何故だか僕は昨日言われた秋成のこの言葉がループしていた。
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緊急登板した小宮くんが、秋成にいきなりの挑戦状!
小宮くんは、自分が好きな女子を傷つけた秋成を許せないと宣言してマウンドに登ったけど…。
それで今まで見たこともないシンカーを投げて、それをショートの秋成が捕球して打ち取ったから万々歳じゃないの?
「良く捕ったじゃないか!玉野!
エラーしなかったことは誉めてやる!」
「…そりゃどーも…。
俺、打順なんで…。」
普段の練習とは別人の様に偉そうになる小宮くん。
やっぱりピッチャーはこれくらい負けん気が強くないと駄目なのかな?
いつの間にか玉野君から玉野になってるし!
「玉野!さっきの好守備に免じて、僕が誰を好きか教えてやる!」
「別に…。
俺、打順なんで…。」
「聞け!そしてお前は罪の意識に苦しむがいい!
僕は早乙女愛美(さおとめまなみ)さんが好きだ!」
「……。」
「……。」
「…え?」
東瀬か藤田さんじゃないの?早乙女さんって玉野秋成ファンクラブの?
ベンチに乾いた笑いが伝染する。
早乙女さんと遺恨のある東瀬もポカーンとした顔をしてる。
「ねぇ、慎太郎…。
小宮くんマジ?」
「…うん。」
「玉野!君は早乙女さんの気持ちに報いるべきだ!
それが出来ないならファンクラブを解散させろ!藤田のの香さんと付き合うのはそれからだ!」
うわぁ…所々、合ってて、少しずつ間違ってるから面倒くさい…。
でも、当の秋成は
「興味ねぇよ。」
と一言だけ言って、七回表、先頭の左打席に立った。
?左打席?秋成は右打者だろ!?
途端に山大付属からヤジが飛ぶ。
「おいおい、さっきゲッツー食らったからって、左打席かよ!」
「セカンドのチビちゃんが『フォルテシモ』にも成功したからって真似かよ!」
「お熱いね、お前ら二遊間コンビは!」
「こいつら玉野と金城だから金玉コンビだな!」
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野次を気にせずファールで粘る秋成。
そして…。
「キャー!!」
小汚ない野次を一瞬で凍りつかせた球場全体の悲鳴!!
主審が試合を止めて担架を呼ぶ!
秋成のピッチャー返しは、相手投手の都倉さんの顔面を砕いた。
マウンドには血に染まった白球が転がり続けていた…。
「…感謝しな…左だから手加減出来たんだぜ…。右なら息の根止まってたぜ…。」
続