「矛盾に直面した時に、抜け道を残しているのが『喜劇』であり、それこそが『悲劇』との最大の違いである。
悲劇は矛盾に直面した時に絶望して終わりである。」
(キルケゴール全集9巻より)
****
はい、難解な哲学よりも少しは簡単で伝わり易い部分を取り上げてみました。
キルケゴールは哲学書だけでなく、神学者として(牧師の資格を持ってます)キリスト教に対する評論や、舞台や文学作品に対する書評も出版しています。
シェークスピアやモーツァルトがお気に入りのようで、随所に引用されてます。
ここでの喜劇はあからさまなお笑いを目的とした作品とは一線を画しています。
終始お笑いのみの作品は「笑劇」という別のジャンルが確立しているそうです。
喜劇=笑いではなく、文字通り「喜び」をテーマとし、作品をポジティブに仕上げたものと解釈出来るでしょう。
で、話を戻し、
「矛盾に対する抜け道」
とは、「不条理で理不尽な困難に直面した時の『打開策』が明示的に、時に暗示的に掲げられた作品」
と、私は解釈します。
例えば、推理モノのコナン君や金田一少年は、日本人が一般的に考える「コメディ」や(赤塚先生のようなわかりやすい)「ギャグ漫画」ではないでしょう。
しかし、犯人が捕まってからのポジティブな完結、主人公の明るく前向きな充実した日常などは、同じく推理をテーマとしても、小説やドラマの横溝作品や松本清張氏の作品とは明らかに違うでしょう。
二時間サスペンスにも笑いはあります。
ハリウッドの刑事モノの軽妙な会話はコメディ映画より面白い時がありますね。
そう、「痛快」で溜飲を下げるものはやはり「面白い」なんですよね。
以前にも書きましたが、英語のinterestingは「面白い」と訳しますが、funnyも面白いです。
違いは前者は「興味深い」で、後者はいわゆるバカ騒ぎした感じの面白いです。
もう、今から15年くらい前に、私が当時のバイト仲間に
「木村拓哉くんが面白い」
と言えば、
「どこが?」
と言われた苦い記憶があります。
身体を張ったパフォーマンスか天然ボケのみが「面白い」って感性は当時からの風潮かな?とも思いました。
今でこそ、有吉さんやマツコさんの様な毒吐きで「面白い」と言わせられる方が出てきてくれて嬉しいですが。
大切なのは困難を解決出来る知性を感じられるかどうかですね。
私の理想はバカリズムさんですが。
(了)