勲章と指環 18 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「とにかく、リディアちゃんがロイと宜しくやりたいと思ってるなら、カイザー丞相とは利害が一致する所もあるんじゃない?
剣術に明け暮れたリディアちゃんには無縁かもしれないけど、女の世界って政治家以上に狡猾な立ち回りが要求されるんだからね!
それにリディアちゃんがどんなに心配しても、明日の首脳会談をどうすることも出来ないのを忘れないの!
じゃあね、お休み。」

……。

エマは好き勝手に話して飲み食いして帰っていった。


だが…エマの言う通りだ。
ハイネ殿下が私に求婚したことにカイザー丞相が抗議しに我が国に来たのならば、抗議させればいいだけではないか?
カイザー丞相の交渉が成功し、ハイネ殿下は予定通りミネルバ王女と婚約してくれたら私には何の問題もない。
そうなればあの男が頼もしく思える…。
しかし…カイザー丞相はハイネ殿下とスールシャール王国と関わらない方が、ミネルバ王女とリーセ王国を自由に操れるのでは?
ならば全力でハイネ殿下を応援し、あの男は無理矢理にでも私にウェディングドレスを着せるのか?
そうなればあの男が恐ろしい…。

だが、たかだか騎士団長の私は殿下やロイが参加する会議に参加出来ない…。

だからこの度、将軍に任命されたら、やっとロイに追い付けると思ったのに!
ハイネ殿下から将軍の勲章を授かる代わりに婚約指輪だなんてあんまりだ…。
****

どんなに朝が来てほしくないと願っても、太陽は容赦なかった。
丞相は勿論、殿下にもロイにも会いたくなかった。
だがそれ以上に、自分の知らない所で会議が進むのが我慢ならなかった。

上の連中に関係なく、私は花乙女騎士団の部下と共に早朝の訓練をしてると…。

「おはよう、リディア君、お久しぶりだね。」

「グレゴリウス司教様!
こんな早朝からどうして?」

「昨夜、カイザー丞相の召し使いから、ハイネ殿下やロイ君と共に宗教会議に参加してほしいとお願いされてね。
本来なら不躾な物言いに断るつもりだったが、今話題の歴史学者アルフォンソ=パウエル殿も招かれてると聞いてね。
司教の立場として、是非とも彼が唱える『大破壊』の説を検証したくてね。
先にロイ君とも話したが、彼もワシと同じく子供のようにはしゃしでおったわい。」

…やられた!
丞相は司教と歴史学者を同席させて、あくまで宗教会議として殿下の婚約騒動を責めるつもりだ!
こうなればロイは学問のことしか頭になくなるに決まってる!続