「流石、剣崎監督はイタリア語にも詳しいようだね。僕もいつかはバチカンに行きたいから少しは習ったよ」
「はい、周お嬢様は小学校から中学にかけて留学経験があり、多数の言語を…。」
「多数の言語を話せるようで話せない」
「庶民はお黙りなさい!
こんな山奥で退屈な寮生活してましたら、使わない外国語なんて忘れてしまいますわ!」
「…寮生活が退屈だからと言って、手元には常に双眼鏡というのは…。」
「山際、貴女まで何ですの?」
「ハハハ、君達はホントに仲がいいね。
でも、『愛情を裏切る最低の行為=ユダの接吻』てイタリア語を憶えてるのは流石だね。」
(周お嬢様はやはり幼少の頃より孤独と戦われ続け、私以外に心を開けずに…。
昼休みに生徒達と輪になって話し合うなどと何という奇跡…。)
「赤毛でなく、銀髪のカツラが使われるようになったのは、ユダ役を嫌がる部員の為に先代達が考えた知恵でもありますわ。」
「確かに、

後悔の念で命を絶つユダをやりたくない気持ちは僕もわかるよ。
それを面白くアレンジしてる篠山さんと三好さんには関心するよ。」
(関心?関心かぁ…でも、うん、今はその言葉で私、篠山五月は死ぬほど幸せです。)
「シンジ君の方がカヲル君を求めた様に、イエスの方がユダを積極的に求めてたとも思います。」
「三好さんに僕も同意だ。
会計係、都市部出身。
イエス達の現実的な遣り繰りはユダが支えていた。」
「赤尾先生、私はユダはもっと『割り切った布教』を求めてただけだと私は思います。」
「クールだね。
確かにユダはビジネスライクなスタイルを望んでたのかもしれない。
でも、それを邪魔したのが…」
『マグダラのマリア!』
「赤尾先生と同じ見解で嬉しいです。
私は更に突っ込んで、ユダとマグダラのマリアとの間の愛憎劇が原因だったかと…。」
「男二人が彼女を取り合ったって?三好さん、それは流石に女子学生らしい恋愛小説だね。」
「いえ、ユダとマグダラのマリアがイエスを取り合い、イエスは二人とも愛してたって図式です。」
「真理亜…それって…?」
「ええ、寧ろ官能小説ですわ!」
「威張って言うな!
山際さんとか官能小説て言っても、知らないだろうし」
(申し訳ございません、知ってます)
続