ファインチューニング!~マリアにお願い 13 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

聖バーバラ女学院、恵明寮B棟の篠山五月の部屋。

「あ、あのう…五月のことは真理亜に任せましたわ。
私は部屋に戻ります。」

「まだいいじゃん。
点呼まで時間あるし?」

「ご、ごめんなさい!もうすぐ電話がかかってきますので…。」

「電話?一昨日もお兄さんからかかって来てなかった?
そんなに話すことあるの?」

「そ、そうなんです!
お兄様ったら、よほど妹の私が心配のようで…。
では、ごきげんよう…また明日。」

バタムとドアが閉まった途端に、真理亜と五月は堪えて感情を爆発させて笑い出した。

「ちょっと真理亜!
あんまり意地悪しないの!
弥生が突然のフリに応えれるわけないでしょう?」

「五月だってわかってるくせに!
他人の恋愛になると元気になるんだから!」

「ごめん、ごめん。でも『知らぬは本人ばかりなり』ね。」

「まずは初々しい弥生の初恋を私達で見守りましょう。
私達が知ってるってなると、余計に弥生は引っ込み思案になるわ。
今の五月みたいにね。」

「うっさいわね!
私はまだ赤尾さんを諦めないわ!
文化祭に…賭けてみる…三年生最後の文化祭だもんね…。」
****
寮の自室に設置された固定電話。
カトリック系の厳しい規則が課せられる聖バーバラだが、部屋にそれぞれ設置された電話は、女生徒の命綱だった。

「トゥルル♪」
「はい!加納です!いえ、大丈夫です。事前に予定は済ませましたので…。」

固定電話の前に正座をし、液晶ディスプレイとにらめっこすること7分。
1コールで受話器を取って相手は、加納弥生の意中の人物だった。

氏家慎吾。

男子校の徳川実業野球部員で、真理亜経由で奇妙な縁が生まれ、(前作オーバーフェンス参照)今では手紙と電話のやり取りをする仲であった。

「あぁ、届いたよ。
ありがとう…。
嬉しいよ。
でも…本当に俺でいいのか?」

「招待状を贈る相手なんて居ませんでしたから…家族は別に割り当てがありますので…。
氏家くんさえよろしければ…。」

「あぁ、絶対に行くよ。
俺なんかがバーバラフェスティバルに行けるなんて文字通りシンデレラボーイだな。」

「バーバラフェスティバルだから嬉しいのですか?」

「バカ!加納さんと過ごせるのが嬉しいんだよ。
言わなくてもわかるだろ?」

「言ってください…。」

「あっ俺にもニュースが…。俺の実家の氏家建設が君の寮の修理に行く。俺も実習生として会いにいく」