ファインチューニング!~マリアにお願い 11 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

秋はうら若き少女達に忘却の風をもたらした。

電気屋の赤尾さんは「ブーム」として終わり、「流感」の文字通り、少女達の流行り病に熱を出しただけだった。

それでも彼が修理を終えてから三日三晩寝込んだものが居た。
篠山五月。
直接彼と言葉を交わした彼女は心に大きな穴を開けていた。

『これ、本当に台風の仕業?』

赤尾が屋上で言った最後の言葉が五月の頭をぐるぐる回った。
勿論、やったのは五月ではなく真理亜だ。
五月には嵐の日に壁をよじ登ることも、テレビアンテナを土台からねじ曲げることなんて出来ない。
だが自分は知っていた。
そして真理亜は自分と赤尾を会わせる為にやったことをわかっていた。
本来、赤尾が疑い、真相を学院側に話せば責めを受けるのは真理亜なのだが、過度に思い悩む五月の様子は、恋故の病だった。

「五月~!
いい加減起きなさい。
何か食べないと毒よ!」

「勝手に部屋に入らないでって言ってるでしょ!」

「自慢じゃないけど、聖バーバラの寮に入って二年半。
自分の部屋で寝た試しがないわ。」

「ホントに自慢じゃないわね!
真理亜の高校生活の八割は、私のベットで勝手に寝てるじゃない!
お気に入りのベットが使えないからって無理矢理起こさないでよ!」

「残り二割は私のベットです。」

「弥生のベットはフカフカ過ぎて寝れないのよね~。
だから五月、早く失恋から立ち直りなさいな。」

「私は別にフラれてません。
自分の罪を告解すべきか悩んでるの。」

「空腹で悩んでも答え出ないわ。
しつこいようだけど何か口にしたら?」

「真理亜、『人はパンのみで生きるのではない。神から与えられる言葉で生きるのだ』」

「赤尾さんの言葉は主からほど遠いんじゃないの?」

「わかってるわよ!」

「五月、『神を試してはいけない』って言葉は私も正しいと思うわ。
でもね、自分を試せるのは自分だけよ。

ねぇ、五月以外にもたくさんの生徒が赤尾さんに夢中になってたの何故だと思う?」

「彼が魅力的だからに決まってるでしょう?」

「それもあるけど時期的なものもあるわ。」

「時期?」

「もうすぐ文化祭ですわ。」

「そっかぁ、みんなバーバラフェスティバルに赤尾さんを誘いたくて…。」

「大分熱気は下がったけど、まだ一部の生徒は自分の名前で文化祭の招待状を贈りたくて、何とかゴリエちゃんに赤尾さんの所在を聞き出そうと必死よ。」

「文化祭か…。」