ファインチューニング!~マリアにお願い 4 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

剣崎周(あまね)は、B棟の壁をよじ登る三好真理亜を見つけ、怒りを露にした。

「山際、何ですの?あの庶民は!
いつもいつも下級生の人気取りの為につまらないパフォーマンスばかり!
聖バーバラのマドンナは私だけで十分ですわ!」

「お嬢様、落ち着いてくださいませ。
下賎な者の相手をしてはなりませんといつも私は申し上げてる通りでございます。」

「私が相手せずとも、あの庶民の三好真理亜ばかり持て囃されるのは黙ってられませんわ!」

「お、お嬢様!何を?」

窓を開けて自分も外に出ようとする剣崎周を、山際佳澄は必死で制止した。

「放しなさい、山際!
あの女に出来て私に出来ないはずありませんわ!」

「いけません!お嬢様にもしもの事があれば私の責任です!」

「では、山際。
貴女がこのA棟の壁をよじ登りなさい。
お目付け役として私と同じ学院に入学したのですから、それくらいはしなさいな。」

「……。」

暫くの沈黙の後、山際佳澄は美しき黒いロングヘアを束ね、

「わかりました。
しかし、五分、いえ三分だけ時間をくださいませ。
両親と弟あての遺書を書きますので。」

この言葉に剣崎周は我に返り、赤面して命令を撤回した。
そして代わりに双眼鏡を持ってくるように命令し…。

「あの女、一体何の目的でこの嵐の夜にこれほど危険な行為を…。」

「三好が何を企んでるかは私には存じ上げませんが、他の生徒の秘め事を覗き見るよりは有効な双眼鏡の使い方かと思います。」

「そ、それは覗きではなく、監督生としての監視を…。」

「向かいのB棟を監督する必要はお嬢様にはございません。」

剣崎家にお仕えする山際家の長女、山際佳澄だが、その歯に衣着せぬ物言いは、周の成長に多大な貢献をした。

「と、とにかく今は三好真理亜の行動を…。」

二人が会話してる間に、真理亜は寮の壁を登り終わり、屋根の上に居た。
強風の中、ほふく前進でテレビアンテナを目指し、立ち上がった瞬間、双眼鏡越しに目が合った。

「私が貴女を見ても、貴女が私を見えるわけがない!」

と周は驚愕したが…。

「ひぃ!」

遥か遠くから鋭く睨み付ける真理亜の視線に周は恐怖した。

それは
「黙って見てなさい。
寮長に私の行動を密告したら、今後の混乱は避けられないわ。
貴女に責任取れる?」

と、無言のメッセージを投げかけられたようだった。

腰が抜けた周は自室のカーペットに地図を作った