ファインチューニング!~マリアにお願い 3 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

三好真理亜
18歳
聖バーバラ女学院三年生
恵明寮B棟監督生
聖書研究会所属
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三好流柔術の道場主の長女として生まれ、物心ついた時から、類い希な身体能力と才能を発揮する。
10歳を迎える頃には、日本屈指の武道家でさえ、彼女と引き分けるのが精一杯だった。
小学校を卒業する頃には、当たり前の様に自分が父の道場を継ぐものだと思っていた。
厳格な父と優しい母、可愛い弟に恵まれて、何不自由ない暮らしだった。

だが…家族の亀裂は突然だった。
中学三年の時、父は真理亜ではなく、弟の秋彦を後継者に選んだ。

弟の実力は遥かに真理亜より劣っていた。
それでも父が弟を指名したのは

「男だから」

の理由だった。

三好真理亜15歳の反抗だった。
「自分が女だから」
に腹が立ったのではない。
柔術と父を毛嫌いしてる弟に対して、なおも未来のレールを無理強いしたことだった。

「柔術」とは名ばかりの、「剛vs剛」の父と娘の確執。
それは優しい母をも巻き込み、繊細な弟の自信を更に失わせることとなった。

「高校なんて行かない!
私が秋彦の未来を決める!
二人で生きていけるんだから!」

初夏の確執が秋に達したころ、真理亜のこの言葉は、親に頬を叩かれる結果となった。
憎き父ではない。
最愛の母にだった。

その翌日、母親は家を出た。

自分の居ない所で、父に
「もっとあの子達を普通の子供らしく…。」
と、何度も涙ながらに訴えてた所を盗み聞きしたことはある。

しかし、決定的な理由を作ったのは真理亜自身だった。

「心を入れ替えて」と言うよりは
「諦めと絶望から、少しでも希望を見出だしたくて」

の理由が相応しいだろう。
父親の言い付け通り、柔術とはなんの関係もない、お嬢様学校の受験を承諾した。

「いい子にしてれば、きっとお母さんと再会出来る。
お父さんじゃなく、私が秋彦を弱くしてるかもしれない」

その思いだけで、聖バーバラの純白ワンピースの制服に袖を通すことを選んだ。
合格の喜びよりも、母親からの連絡があったことの方が遥かに嬉しかった真理亜だった。
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しかし、出身は中流家庭の娘である。

破天荒な彼女の振る舞いを快く思ってない者も居る。

恵明寮A棟の寮監督生の剣崎 周(あまね)一派がその代表である。

今日もA棟の窓から、台風の夜に寮の壁をよじ登る真理亜を見つけ…。

「あの庶民は…また私より目立とうとして!」