※このシリーズは自作小説「オーバーフェンス」の続編です。
また関連作品の「テッペキ!」のシリーズも合わせてお読みくださいませ。
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「真理亜、本当にやるの?」
「五月(さつき)、過去に中途半端な行為をしたせいで、地獄を味わった仲間を知ってるでしょう?」
「…そうだけど…。」
「真理亜、何も今日じゃなくても…危ないよ…。」
「弥生、台風が上陸する今夜がチャンスなの!
絶対にバレない為にはね。」
「うん…。」
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聖バーバラ女学院。
全寮制のミッション系お嬢様学校は、遥か山の頂上にあり、女生徒達は世間と隔離された「陸の孤島」で生活していた。
神様に祈りを捧げるだけでは退屈過ぎる毎日に、学校一の問題児、三好真理亜の悪戯心は刺激された。
教師や教会関係者だけでなく、職員全てが女性である。
うら若き女生徒達は率直に男に飢えていた。
しかし、こんな山の頂上に来る男は、食品の納入に来るじさんくらいだった。
40手前のおじさんは一部に人気はあったが、警備主任の女性と交際が明らかになり、生徒の熱は冷め気味であったのだが…。
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「こんにちは、電気屋です!」
それは奇跡の来訪者だった。
とある夜の落雷で、寮室のテレビが何台かが壊れたらしい。
学院側に専門家や技術者が居るわけもなく、学院は仕方なく業者に依頼して、この山の頂上にまで来て貰った。
そこで女生徒達は出会ってしまった。
赤尾俊光(あかお としみつ)という青年に。
「プラグから焦げついてる場合と、テレビの設定をリセットすれば直る場合とありますね。
一台ずつ見ていきますね。」
作業服に身を纏った爽やかな青年が寮の自室に居る。
テレビが壊れた女生徒達はこのあり得ないほど嬉しい状況が永遠に続いてほしいと思っていた。
テレビが壊れなかった女生徒は死ぬほど悔しがっていた。
中には厚かましく
「DVDデッキの具合も観てくれませんか?」
とお願いして数分間の映画観賞デート(気分)に成功した強者も居た。
彼が帰った後は学院中で噂となり、女生徒達は
「どうやってあの電気屋さんにもう一度来てもらうか?」
だけを考えていた。
中にはわざとエアコンをぶっ壊した生徒も居たが、仲間から通報され、真夏に暖房の効いた部屋で聖書の書き写しをさせられていた。
そして今、三好真理亜は台風の夜に寮の屋根の上のアンテナを曲げようとしてた。
(続)