瀬戸際の花嫁 8 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「おみねちゃんまで何を言い出すの?
私はずっと宗時さんを守るって決めたの!
その為には虎徹の力が、おみねちゃんの力が必要なの!」

「瞳…。私だって近藤勇様を幽霊になってからも100年以上慕い続けたから、恋する貴女の気持ちはわかるつもりよ。
でもね、『守る』って、本当に刀を振るうことだけ?」

日本刀の虎徹に宿るおみねの霊は、病室のベッドに臥せる北御門瞳に優しく語りかけた。
その様子を見て、バティンは、隣のアンドロマリウスに…

「ここからの会話は私達部外者は遠慮した方がよさそうですね。
では、対価の方を…。」

「す、すみません!バティン様。
では外で契約書と請求書を…。」

バティンに促され、慌てて部屋を出るアンドロマリウス。
それに遅れてバティンも部屋を出た。
****

悪霊や妖怪退治を続けた一年間。
おみねは文字通り瞳の相棒だった。
「ソロモンの悪魔バラム」こと原宗時との距離を縮めたのは間違いなくおみねの存在だった。
そして妖刀使いとして自信を持ちはじめ、公私ともに原を支えられると思ったからこその、結婚だった。

しかし、身体にツケは回ってきた。

魔法に呪術、武術の経験もない35歳一般女性に、おみねの力は強すぎた。
修行の経験のない雑貨屋女性社員の瞳には文字通り「命を削る」ことでしか、おみねを操れなかったのだ。

「剣術の修行も頑張ってるわ!
宗時さんの占いサイトにも読者占い師として寄稿してるし…。
私は愛する人とずっと傍に居たいの!」

「瞳、おみねさんの言うとおりだ。
私を想う気持ちは嬉しいが、君に何かあれば、君のご両親に僕は何と言えばいい?
『気』の取り扱いは練度が要求される。
退院したら、少しずつ私がコーチしてあげますよ。
権藤先生でしたね?
瞳は身体から残留した妖気が抜けたら、また虎徹を握れるんですよね?」

会話を静観してた権藤医師。
天使らしく最善の選択を迫り、医師らしく最短の道を示した。

「原さん、彼女さんの容態はそんなに軽くはないんですよ。
今、彼女に打ってる点滴は『キアリーテイル』という解毒薬です。」

「キアリーテイル?それを処方したということは…。」

「ご存知なら話が早い。
この薬は体内の妖気を解毒するだけでなく、自身の免疫力を上げ、妖気に対する抵抗力をアップする効果があります。」

「先生、待って!抵抗力ってまさか…?」

「ええ、やがて君は自然とその浮遊霊をはねつける」