聖ヨハネ病院 救急治療室の待合室
「主任看護師の里見愛です。
この病院にしては珍しい『人間の』急患にも驚きましたが、ソロモンの悪魔が三名も勢揃いとは…。この病院の創始者が見たら卒倒しそうです。」
小柄で黒縁眼鏡をした看護師は、私達を一瞥しただけで正体を見抜いた。
バティン様は召喚された悪魔だし、バラム様は悪魔扱いされた人間だけど、まさか安藤真利子として人間に化けてる私まで初見で見抜かれるなんて、流石はサタン様と大天使ウリエル様のお姉様の『癒しのラファエル』様…。
「貴方がバラムさんこと、原宗時さんですね。
『虎徹』の一件は妹から聞いてですが、事態は深刻です。心して聞いてほしいです。」
ラファエル様が人間に化けた里見愛というナースは、淡々とした口調で話し出した。
「瞳は、瞳は助かるのですか?
お願いです!
ここは天界から出向した天使や、天界に精通する霊能力者やヒーラーが多数在籍する病院と聞いています。
ラファエル様、瞳を、瞳を助けてください!」
ソロモンNo.51のバラム様が占いサイトの社長として人間界で成功してるのも驚きましたが、サタン様の勤務先の一般女性と挙式寸前と聞いて驚きました!いいなぁ、絶対私も憧れのウェディングドレスを着てみたい…。
「原さん、北御門さんの症状は一言で言えば『妖気中毒』です。」
バラム様の表情が固まった。
辛い気持ちでいっぱいなのは端で見ている私にもわかった。
「『妖気中毒』?それはつまり、原因は虎徹に、いや、『おみねさん』の霊に問題があると?」
「ここでは私はあくまで看護師です。
詳しい診断については担当医から話させてもらうですが、ただの人間女性がここまでの妖気を操れること事態おかしいです。しかも、それがあの虎徹の一件からなら、たかが一年足らずの修練なんて異常です!
人間の脆弱な肉体を考慮するです!
それを見守るがフィアンセの役目のはずです!」
ラファエル様の潔癖さは有名な話なのですが…。
「里見様、ナースの貴女が先に取り乱さないでくださいませ。
どうやら『関係者全員で』医師の話を聞く必要がありそうですね。
お待ちください。
バラムの車のトランクから『当人』を連れて参ります…。」
「バ、バティンさん、お恥ずかしい姿を見せたです…いえ、その様な雑用はウチの従業員に行かせるです。貴方はヘリに変身して、車ごと皆この病院に運んで来たですから、ゆっくり休んでるです!」続