瀬戸際の花嫁 2 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「瞳さんを必ず幸せにします。」

本やドラマでありきたりのセリフを、まさか私なんかに言ってくれる男性が居るなんて思いもしなかった。

ただただ地味に生きてきた私が、本と占いしか興味ない私なんかが、全てを肯定された瞬間だった。

35年生きてきた中で、彼と出会うまでの34年間よりも、出会ってからの約一年の方が遥かに真実の様に思える幸福感。

それはその言葉を受け止めた私のお父さんも、「あぁ、私と同じ気持ちなんだなぁ」と思い、宗時さんの言葉のおかげで、私は改めて両親に大切に育てられてきたんだなぁと、実感した。

「む、娘を、よ、宜しくお願いしっ、します!」

「そこは貴方が緊張する所じゃないでしょう。
瞳、お父さんたらねぇ、昨日一日中、どの服を着たらいいか、鏡の前でファッションショーしてたんだから。
よっぽど嬉しかったんじゃない?」

「お父さん…。」

「勿論、私も原さんがこんないい男で、占いサイトの社長だって前もって知ってたら、美容院に行ってたわよ。」

「やめてよ、お母さん!いい歳してみっともない!」

「いい歳なのはあんたも同じでしょう。
結婚はいつでも出来るけど、出産はそうはいかないんだからね。」

「わかってるわよ!とにかく、私達はそういう形での結婚じゃないんだから、そこだけははっきりしとくからね!」

「わかってるわよ、あんたは泪(るい)みたいにいきなり赤ちゃん抱いて家の敷居またぐ娘じゃないってくらいわかってるわ。
それに原さんもそんな男性には見えないわ。」

「あ、ありがとうございます。
まさかお姉さまの泪さんのお子様は確か…?」

「ええ、以前店に遊びに来てくれた甥っ子の仁(ひとし)くんよ。
お父さんたら、その時はすっごくお姉ちゃんに怒ったのに、仁くんがやれ幼稚園だ、小学校だって度に甘甘な態度になるんだから…!」

「原さん、子供の予定がないんなら、瞳じゃなくて、私と結婚しましょうか?
この人要らないし、私も社長夫人って言葉の響きに憧れるわ!」

「やめてよお母さん!」

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心配してたのが馬鹿に思えるくらい、お父さんとお母さんは私達を歓迎してくれた。
その姿が嬉しかったからこそ、私も宗時さんも

「こちら側」
の事を話せずに帰宅する事になった。

宗時さんは悪魔バラムの3000年前の記憶と、占い師、呪術師の能力を受け継ぐ者。
そして私は虎徹に宿る幽霊おみねちゃんを操る妖刀使いということを。続