「母ちゃん頼むよ!来週までに返済しないと、俺は…。」
「人様に迷惑かけるくらいなら、立派な最期を遂げた我が子をお母さんは誇りに思います。」
「ツーツー」
母ちゃんは俺が金の無心をしても本当に困ってないかどうかを見抜いてた。
確かにコレクションを処分して、
「今はこれだけしか…。」
と言えばもう少し待ってくれたかもしれないが…。
その時の俺は金は二の次で、騒ぎを大きくしたかっただけかもしれない。
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「動くな!こいつの命が惜しければ、このバッグに入るだけ金を詰めろ!」
近所の銀行に向かい、案内係の女性を人質に取る。
軍事オタクの俺が改造した銃は本物に負けないはず。
札束の入ったバッグを、俺を脅した集金人に突き出してやるつもりだったが…。
「金を出せ!」
俺が自動ドアをくぐった時の異様な雰囲気…。
(先客かよ!)
何て運が無いんだ!
折角の計画も、まさか先に銀行強盗に入られるなんて!
しかも案内係のお姉さんを人質に取るやり口は俺が考えたんだ!
「お前が死ねよ!
!また母ちゃんに笑われるだろ!」
「パン!」
先客は無抵抗に、背後から俺の改造銃の餌食となり、その場に倒れこんだ。
「仲間割れだー!」
と、居合わせた男性客が叫んだ途端に、我先にと、出口の自動ドアに客が殺到し、行員も裏口から逃げ出し大混乱となる。
その時、人質から解放された案内係のお姉さんが…。
「そのバッグと私を持って行って!」
と言われたから、思わず言う通りにしてしまった。
裏の駐車場までバッグを持ち、お姉さんの手を引き、銀行を後にした。
レンタカーを走らせる車内でお姉さんは…。
「ちょっと…!余計なことしてくれたんだから、君が責任取ってよね!」
「余計?責任?何のことだ?」
「君の前に居た強盗は私の彼よ!
私の使い込みを支店長が疑いだしたから、彼に強盗に入ってもらって、私が横領したお金を水増しするつもりだったの!
君があいつを殺したら私まで疑われるじゃない!
しっかり逃げてよね!」
つまりこのお姉さんの芝居を俺が邪魔したわけで…。
「これ盗難車?」
「いやレンタカーだ。」
「馬鹿!そんなの動く標的よ!」
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「動くな!車を出せ!」
お姉さんの指示通り、華奢な女性タクシー運転手に改造銃を向ければ…。
「今朝、浮気を繰り返す旦那を殺害してしまったんです…。
私も連れてって下さい。」終