事件から二週間後の四谷署
「ただいま~近藤くん、コーヒーお願い濃い目で。」
「お帰りなさい、宇都宮先輩!病院どうでした?」
「ラファエル姉さんて口は悪いけど腕は確かね。
切られたお腹の傷口は痕も残らず綺麗になるってさ。
近藤くんも切られたお腹見てみる?」
「うわぁ、駄目ですよ!昼間から…」
と、ブラウスの裾を捲り上げようとすれば近藤は慌てて目を逸らす。
(何よ、下着はガン見してたクセに!
あの色ボケババアに言われなくても、君を『いい男』に育てるには骨が折れるわ)
「ロビンフッドでケーキテイクアウトしてきたよ~。
その後の話聞きたい?」
「勿論、聞きたいですよ!」
「じゃあ、食べながら話すね。
あの後マリちゃんは…。」
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「ありがとう…、グラシャ=ラボラス。『俺のアンドロマリウス』って言葉、死ぬほど嬉しかったよ。」
「契約通りお前を守れて良かったぜ…。
また探偵に復帰するんだろう?」
「ううん、もう人の秘密や警察に関わるのはうんざり。前任の中野さんに暫く復帰して貰って、後任が見つかり次第、正式に探偵業は辞めるわ…。」
「アンドロマリウス、お前さえよければ…。」
「ごめんなさい、御子神さんや店長や沙代理ちゃんが居るロビンフッドで、もう一度働けたらどれだけ楽しいかと思うわ…。
でも…私、貴方と同じ職場は無理なの…。
仕事柄、女性客と軽妙に話すグラシャ=ラボラスを見続けるなんて堪えられなかったもん…。」
「お前まさかそれが原因で…?」
「ズルいよ、グラシャ=ラボラス!貴方はいつも対価を後払いにするし、仕事が終わった後に依頼人に言う『いつもの言葉』をなんで私に言わないの?」
「俺は働き終えた仕事ぶりで対価を判断してほしいだけさ…。
それに『二度と俺なんかに出会っちゃいけねえぞ』は、お前にだけは言いたくねぇ。
これからも会い続けたいからな。」
「馬鹿…そういう馬鹿なトコ大好きよ…。
でもまだ駄目。王明さんが史香さんと一緒に天界に捕まったから、じゃあ貴方に…なんて、私が私を許せないわ!
ごめんなさい、もう少し待ってて…。」
「あぁ…俺の気持ちは変わらないさ。」
***
ある月曜の夜
「やだー!明日着るステージ衣装が破れちゃった。
どうしよ?直す時間が…。」
「沙代理、こういう時は『真夜中の便利屋ブラウニー』だ!」
「お電話ありがとうございます。安藤真利子が承ります。」
完