「ハァハァ…。」
史香は息を整えるよりも、着衣を整えることを優先しようとしていた。
しかし、未だにその目は虚ろでであり、シャツのボタンを止めながらも、足は畳にだらしなく投げ出したままで、捲れ上がったタイトスカートのおかげで白い太股と下着が露になっていることに気付いてなかった。
捜査に鋭い観察眼は発揮されても、女心に発揮されない近藤だが、流石の彼でも半ば放心状態の史香に気付いた。
「大丈夫?激しくし過ぎた?」
「…人は見かけによらないのね…。
こんなに強くされたの初めてだったわ…。」
視線を落とし、手の平で畳の温もりを確かめる史香の仕草は、過ぎた行為を思い出してるかのようだった。
「史香さん、次は…。」
「駄目よ、近藤くん。
『今度は』『次は』は禁句。それがこの世界に踏み込んでしまった者達の暗黙のルールでしょう?
果たされない約束なんて、破った方も破られた方も辛いだけよ。」
「史香さん…。」
近藤は「ごめん」と言いかけて止めた。
同情が余計に傷つけることを知ってしまったからだ。
「そろそろ迎えが来るわ。貴方は行って!」
「それって僕は関係ないってことですか?
僕は、ちゃんと説明しますから。」
「それを言う相手は私じゃないでしょう?
大切にしてあげて。
来たわ、主…。」
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「コラー!!
そこまでよ~~!!」
「ウリエル姉さん、落ち着いて!
傷に障りますし、ラファエル姉さんが治療に専念出来ません。」
「これが落ち着いてられる?
ここから初めて読み出した読者様は、
『え?志磨子先生の団○妻シリーズが始まったの?』
って勘違いするでしょう!?
迎えに来たのは『主人』じゃなくて能天使より上の主天使でしょ!」
「すみません…。でも僕は先輩を助けたのに…。」
宇都宮に怒りを爆発され、途端にシュンとなる近藤。
治療する看護師は見兼ねて…。
「近藤刑事、妹の無礼は姉の私から謝るです。
これは妹の照れ隠しです。」
(照れ隠しで怒ってるだけじゃないのに…!史香の様子に気付いてないの?バカ!)
と、心で呟く宇都宮を他所に、天界から派遣された主天使は、史香と未だに昏睡中の能代を拘束した。
「天界に連れてかれたら奥さんはどうなるんですか?」
「ええと、人間の近藤くんにあまり言っちゃ駄目だけど、天界による運命操作が…。」
「そんなの嫌!私、仕返しするもん」
「奥様?どうやってここに?」続