ステージに上がった弟の星明は、私の彼氏のフリをしてくれている。
見物してる女の子達から、「ジャニーズの○○君に似てるよね。」とか、「○○通り歩くとスカウトされそうだね」とかキャー、キャー声が上がる。
完全に先にパフォーマンスした亜由美ちゃんの彼氏役の俳優さんのことなんて記憶に無いみたいだ。
「…片手でリンゴ潰します!」
大魔王サタンとしての魔力は強大で、人間に化けてもパワーを抑えるのが大変だと星明は言っていた。
でも…よりによってリンゴだなんて、エデンを思い出すじゃない…。
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二千数百年前
「ウリエル、貴女まで付いてくることはありません。
ルシファーは私が責任を持って探し出し、エデンに帰還させますから。」
「ミカエル様、ルシファーちゃんは可愛い妹なの。
連れて帰りたい気持ちは同じです。
それに…ガブリエル姉さんの出産まであまり時間がないわ…。
姉妹揃ってお祝いしたいの。」
「ならば尚更、アビス(奈落)に貴女が行くのは…あそこは魑魅魍魎の巣窟です!」
「ミカエル様!ご心配は無用であります。
私が命に代えても、ウリエル様をお守り致します。」
「インドラ殿。パワーズ(能天使)の貴公は、アークエンジェル(大天使)の私達より階級は上です。
いくらガブリエルの命とはいえ、貴公に警護して頂くだけで恐縮であります。」
「何を言われます、ミカエル様!先の大戦の英雄ミカエル様と『天界の歌姫』ウリエル様の護衛など光栄であります!
襲いかかる悪魔は、この能天使インドラが、ヒンズー仕込みの剣技で…。」
「インドラ様、私達は戦いにアビスに来たんじゃありませんよ!
悪魔さん達だって、話せばルシファーちゃんの居場所教えてくれるわよ。」
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確かあの時、私達三人の前に男女の悪魔が突然現れ…。
「へぇ~、天使って、貴女みたいに物わかりのいいのもいるんだね~。
大天使のウリエル様は悪魔に理解があるってのは本当なんだ?
でも、忠告しとくよ。
そっちの腹の読めないパワーズの兄さんの言葉をまんま信用しない方がいいよ。」
「このアバズレ女め!魔界はこんな悪魔ばかりか?」
インドラさんは剣を抜き…。
「おっと、無闇に剣を振り回すたぁ、狂犬みたいな天使も居るんだなぁ?」
「犬コロのあんたにだけは言われたくなんじゃない?」
ウソ?まさかあの時の…?
続