「んじゃ、頑張れよ!
私達の苦労無駄にすんなよ!」
「うん、ホントにありがとう、美夜ちゃん、小夜ちゃん。
終わったら連絡するからね。」
「いいから急げ!
遅刻するぞ!」
安藤真利子のアパートを三人同時に出て、真利子はグラシャ=ラボラスとの待ち合わせ場所に。
ブラウニー姉妹は仕事を終えての家路だ。
笑顔で真利子を見送った後、美夜子はやりきれない面持ちで妹に言った。
「小夜子、あんた私が言った心理テストの答え知ってる?」
「ううん、知らない。
私だったら一本だな。
それがどうした?」
「マリリンは躊躇なく、二本て答えた…。
それが問題なのよ。
『たくさん所有する花の何本をドライフラワーにするか?』
この問いでわかるのは…。
『貴女は同時に何人を愛することが出来るか?』
なのよ…!」
絞り出す様に、苦悩しながら話す美夜子。
それは職人気質の妖精ブラウニーが、仕事を終えた充実感とは、ほど遠いものだった。
純粋に友達を心配する女性の苦しみだった。
「美夜姉、じゃあマリリンの二本…。」
「ああ、あくまで心理テストなんてゲームだけどな…。
二本ってのは……二人とも好きなんだよ。
マリリン本人は気づいてないけどな。
王明って男も、グラシャ=ラボラス様も…。
両方好きだから出口ないんだよ…。
そして、マリリンは『不正を看破する悪魔』だ。
自分の自己矛盾に耐えられるわけない。
誰かが悲劇に遭うだろうさ。」
「美夜姉、それじゃ止めないと!
親友の不幸で儲けるってどういうこと?」
「甘えんな小夜子!妖精ブラウニーは仕事に私情を持ち込まねえんだよ!
それに『行くな』って言われたくらいで止めると思う?」
「そうだけど…。」
「自分の正義で自分が傷つく。
アンドロマリウスはそういう悪魔なんだよ。
だから私はあいつと友達やってんだよ。!」
「美夜姉…。」
「それより小夜子!あんたが『一本』って優等生回答するとは意外だったわ~。」
「私はいつも清純派だろ?」
「あーそだねー(棒読み)」
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繁華街のビルの前に彼は居た。
道行く女性達は振り返りながら彼の容姿を一秒でも長く見たがっているようだった。
しかし、私は今、気付いた。
「契約するかどうか?」を話し合う為に待ち合わせしたのに、既に電話で契約した私は何を理由に話せばいいの?