私は舞花と嵐は似ていると決めつけていた。
でも、凛子お姉ちゃんに指摘されてわかった。
それは二人に共通する部分を「私が」見たいように見ていたからだ。
そう、全ては私の中から自信の無さから来る嫉妬と羨望。
嵐の揺るぎない自信とブレの無さ、同い年とは思えない達観した眼差し。
そして舞花の音楽の才能に加えて、恋愛戦術の巧みさ。
全て憧れと妬みであった。
私の自信の無さは家族に由来する。
麗香お姉さんの明晰さや凛子お姉ちゃんの逞しさもない私は、舞花と音楽をすることだけが拠り所だった。
そして舞花が私以上に嵐を選ぶなら、私はまたこのだだっ広い相野邸にポツンと佇むことになる…それが一番怖かった。
「凛子お姉ちゃんは最初から私の気持ちわかってたの?」
「るん、私は別に読心術士の修行したわけないね。
但し、強者の辿る道として、『洞察力』。これはとても大切ね。」
「洞察力?敵の動きを先読みするとか?」
「そうある。
るん、そもそも何で私に相談しようとした?」
「それは…。」
「嵐と利害関係が一番無いのは私、と計算してたあるね?」
核心を突かれた。
お母さんは無条件に嵐を可愛がるだろうし、パパにはこんな気持ち話したくなかったし、麗香お姉さんと舞花をこじらせたくなかったし。
凛子お姉ちゃんなら離れた立場から正しい事を言ってくれると思ってたから…。
「るん、格闘でも芸能でも、駆け出しの新人を何て言うか知ってあるか?」
「何?ルーキーってこと?」
「そうとも言うが、『クチバシの黄色いヒヨッ子』とも言うね。」
「うん、言うね。男子が好きな漫画で出てきそうな…。」
「でも、ヒヨッ子は曲がりなりにも『デビューは』してるある。舞台の結果が悪くとも、舞台に立ててるある。
では、舞台に立ったことも無いのに、外野から批判するだけのヒヨッコ以下を何というね?」
「ヒヨコ以下だから…。」
「そう玉子ね。」
グサッと突き刺さる言葉だった。
相野グループCEOの三女として生まれた苦しみを、音楽が解放してくれると思っていた。
でもそれは舞花の才能に引っ張ってもらう期待だった。
相野家に対する私の心の闇を、相野嵐が太陽の様に照らしてくれると思っていた。
でも、嵐は嵐で闇を抱えていて当然だった。
「るん、私が言うことなんか気にし過ぎるな!
嵐が取るに足らない男なら、その友達がどうでも良ければ悩まないある。
るんは幸せ者ね♪」