トナカイさんからの贈り物 最終回 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「それではみなさんごきげんよう。天界へお越しの際はいつでもこのサマエルがご案内致します。」

と言って、肉体を元の神尾少年に返した。
一緒に居た三人の少女も正気に戻ったようだが、サマエルの運命操作は最後まで効いて、誰も疑問を抱かない。
それよりも皆がバラムの器用なカードマジックに釘付けになっていた。

「ではサマエル様に代わり、僕からも皆様に問題です。
『サンタクロースは良い子にプレゼントを運んで来ますが、トナカイは良い子に何を運んで来るでしょう?』
皆様も自由な発想で考えてください。」

おいおい、サマエルの謎解きが済んだと思ったら今度はバラムか?

「えー?トナカイはプレゼントくれないから何も運んでこないよ~?」

三人の少女が口々に発言し、大盛り上がりとなる。

北御門さんも…。

(おみねちゃんわかる?)

(江戸時代に生きてた私にキリシタンの風習なんてわからないわよ!)

「ロマンチックに応えるなら、トナカイは『約束』を運んでくるとか?」

甥子の神尾少年の発言に「おお~」と声が上がり、三人の女子の心を掴んだようだ。

「いいわね、じゃあ『信じる心』とか『純粋な気持ち』とか?」

「確かに道徳的に正解でしょうが、トナカイそのものか?」

「あ~わかった!原さんたらイジワル問題を!トナカイはソリを引くから『サンタを運んで来る』でしょう?」

少年少女も「そっかぁ」と言って談笑のままお開きとなり、余は

「なるほど、流石バラム。答えは『簡単』だったな。」

「ありがとうございます、佐田様。」
**
その日の夜。
余は枕元に靴下を吊るして眠る事にした。
童心ではない。
天界は「手続き」にこだわるからだ。

日付が変わった途端、シャンシャンシャンとの音と共に、それはやってきた。ミカエルとルシファーの二人は、トナカイが引くソリに乗り現れた!

二人かがりで大きな袋から取り出した「サタンへのプレゼント」は勿論、

「ただいま星明。遅くなってごめんね。」

「お帰り、待ってましたよ、奈々子。」

「一年ぶりの再会のプレゼントが『呼び捨て』だなんて、お姉さんの心をくすぐるじゃないの♪嬉しいよ、星明。
ずっと会いたかった…。」

「私もです…。」

そう、クリスマスイヴの夜、トナカイは『簡単』を運んでくるのだ。
理由もなく制約もなく、信ずる者だけに現れる。トナカイは事をシンプルに運ぶのだ。
貴方にメリークリスマス。