離れにある嵐の研究室に行こうとするお母さんを何とか説得(?)して、私が夜食とコーヒーを運ぶことにした。
屋敷から離れは外灯が照らしてくれてるが、懐中電灯を照らす。
警棒にもなるアメリカ式のライトだ。
まぁ、凛子お姉ちゃんや月之介の様に腕に憶えがある者なら使い道があるんだろうが、私にはただの気休めだ…。
離れは言ってみれば「寮」だ。
一階は空き室になってて、二階にそれぞれ月之介と雪之介の部屋がある。
それぞれの部屋にお風呂もトイレもあるから、私がこっちで暮らしたいぐらいだ。
嵐はいきなり引越してきて屋敷に自室を、離れに研究室を貰えるなんていいなぁ…。
嵐が両親を失って悲しい気持ちもわかるし、ウチの親が力になりたい気持ちもわかるけど…。
なんだろう、私って期待されてないのかな…。
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雪之介と月之介の部屋の灯りは消えている。
二人の朝は早いのは良く知っている。
これ以上二人に迷惑はかけられない。
「嵐!いくら転入までまだ日があるとはいえ、夜更かしは身体に悪いわよ~!」
ノックをして声をかけても返事はない。
灯りを着けたまま寝てるのだろうか?
風邪を引いたら大変だ。
「嵐~!嵐!」
あまり大きな声を出して隣の月之介を起こしてはいけない。
「~。ーだ。」
微かに返事が聞こえた。
嵐の声が殆ど聞こえない。
ドアノブを握ると鍵は開いてたが…。
「アホー!まだ開けるな!って言ったやろ!」
「え?何~!」
やけにドアが重いな?と感じたのは、嵐がドアの前にぶ厚い本を山積みしてたからだ!
私は嵐が何て言ったか意味がわかった時には…。
「ガラガラガラ~!」
「痛い!痛い!」
ぶ厚い辞典や辞書の雪崩に巻き込まれた嵐。
かろうじて彼の手が見える。
「るんか?はよどかしてくれ!
あかん、こっちからじゃビクともせん。」
「ごめんね、嵐!」
「積み上げ過ぎた俺も悪い…。
それより早く…。」
本の山をかき分け、必死に嵐を探す。
ようやく最後の一冊をどけると彼の笑顔が見え…。
「こんばんは。
夜中にしては騒がしいご挨拶やな。」
「ごめんね…。」
「それより、どかした本をそんな無造作に積んだらまたすぐに…。」
「キャ~!」
今度は私まで下敷きに!
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「るんお嬢様、僕は何も見てませんから。リアル床ドンなんてね♪」
異常を聞き付けた月之介に救出されたが、このニヤニヤ顔に腹が立つわ!続