麗香お姉さんとお母さんはそっくりです。
何が何でも自分の思い通りにしようとします。
お母さんがどんなに頑張っても手に入らなかったのが春人伯父さんです。
お母さんにしたら、静伯母さんに実の兄を奪われたのは、人生最大のショックだったと思います。
突然グループを継がないといけなくなったお母さんは、留学を希望してたパパを強引に「説得」したそうです。
そして無理矢理、妊娠と結婚を迫ったその結果が長女の麗香お姉さんなわけで…。
愛の結晶というより、私利私欲の結晶がそのまま大きくなったのは間違いないと思います…。
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「いいこと、他の生徒にもこの際言っとくわ!
例えるならば、この相野学園は牧場。
私だけが牛飼い!
貴女達は乳牛なのよ。
貴女達は、私の為に立派なホルスタインになることだけ考えてればいいのよ!」
「なぁ、るん。麗香姉ちゃんって、いつもこんな感じか?」
「ええ、日に日に悪化してるわ。」
「言ってることはメチャクチャやけど、迫力が半端ないな。自分に対しての迷いの無さが尋常やない…。ある意味尊敬するわ…。」
「雪之介、これでこの娘が素人ってのは確定ね。」
「はい、それについては安心しましたが…。」
私も舞がお金目当てで凶行に及んだんじゃないことには安心したけど…。
でも、それだと一つだけ疑問が残る。
「ねぇ、舞。貴女のお姉さんの話って、三年も前よね?
じゃあ、まさか舞が相野学園に進学したのも、私と軽音部に入ったのも…。」
聞くのが怖かった。
でも知りたかった。
私は舞を、親友の舞花を信じたかった。
「当たり前じゃないの。
相野学園に進学して、るんと親しくしてれば、相野麗香に復讐するチャンスはきっとあると思ってたわ!」
「な、何よそれ!じゃあ私とのユニットは?ライヴの打ち上げであんなに楽しく乾杯したのは?
私達親友じゃなかったの!?」
「るん、あんたこそ私と友達だと思ってたの?」
「舞!!」
許せない気持ちいっぱいで、私の手で平手打ちしてやるつもりで駆け寄った。
でも…。
「やめとけや、るん!」
「キャッ!」
勢いのついた私に嵐がいきなり足を引っかけるから…。
「ドン!」
「あ゛…。」
四階の窓は開きっぱなしで、舞と麗香お姉さん二人同時に突飛ばしちゃった!
何?私、連続殺人犯?
「大丈夫か?」
窓から転落した舞の手を嵐が掴み、舞の手はその下に麗香お姉さんの手を掴んでた。