嵐は凛子お姉ちゃんと月之介と一緒に登校したようです。
今日は嵐は別室で編入試験を受けているみたいです。
聞く所によると和歌山でも成績は良かったそうだから問題ないと思うけど…。
仮に嵐がウチの相野学園に相応しくない学力だった時の、お母さんの行動が心配なわけで…。
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「るんちゃん、聞いてる?」
「ごめん、舞!何?」
昼休み。私はクラスメートで同じ軽音部の瀬能舞花(せのう まいか)とお弁当を食べていた。
私達は「まい☆るん」ってユニットを組んで活動してるのですが…。
舞のセンスって凄いんです。
「ほら、これが昨日言ってた新しいスティックだよー!」
「うわぁ、カッコイイ!
舞ってホントに凄いよね!
シンセサイザーの腕にも驚いたけど、今度はドラムも本格的にやるなんて…。」
「次のライヴは、キーボードで出演するけど、いつかドラムでも出たいな…。」
軽音。それは私にとって夢だった。
姉達ほど賢くも強くもない私が、エレキギターだけは負けないと、一生懸命打ち込めるものだった。
そしてそれは舞のおかげなわけで…。
「でもね、いいスティックなんだけど、問題は私…。
指が短い私は、グリップをもっと強く握って安定させたいの。」
「そんな違いを気にするなんて、舞はホントに天才ね♪」
「ううん、るんちゃんに出会えたおかげだよ…。自宅でピアノ弾くことしか知らなかった私にこんな素晴らしい世界があることを…。」
「で、せっかくのスティックが手に馴染まないならどうするの?」
「ううん、突然指が長くなるわけじゃないから、少しグリップをナイフで削ってみるわ…。」
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何気ない昼休みの会話のはずだった。
その時、勢いよく教室のドアは開き、
「嵐くん、妹の教室はここよ。」
「お~い、るん!編入試験なんて簡単やなぁ。ばっちりやったでぇ!」
馬鹿!声デカイ!恥ずかしい!
それに麗香お姉さんと雪之介まで!生徒会員が転校生を案内するのはわかるけどさぁ…。
「ちょ、るんちゃんを呼び捨てにするなんて誰ー!?」
「ご、誤解しないでよ!ただの従兄弟よ!チビで田舎モンで無愛想な奴なんだから!」
「は~い、ごちそうさまでした!
友情に誓って詮索はしませ~ん。」
「だから違うって!」
一年生の教室を騒がせたのは嵐よりも寧ろ麗香お姉さんの存在だった。
「麗香様ですわ!!」
「麗香様、私のお弁当食べて下さいませ!」