「叔母様、遠くから本当にありがとうございます。
それに先ほどは叔母様のおかげで…。」
「いいのよ。
関西支社には、相野グループはお義姉様の葬儀に関わるなと通達したのに…。
支社長には鮎兎(あゆと)からキツく言っとくからさ♪」
「本当に…叔母様には何から何まで…。」
「嵐くんはまだウチの娘達と同じ高校生なんだから!
余計な心配しないで頼れる大人を頼りなさい♪
嵐くんはその若さで喪主を務めただけで十分に頑張ったんだから。春人兄さんにそっくりよ…。
ウチの凛子やるんじゃとても無理ね。
まぁ、麗香ならなんとか…。」
「ちょっとお母さん、いつも麗香お姉さんばっか…。」
「え?君が麗香さんじゃなかったの?」
「わ、私は三女のるんです!
気付かなかったの?」
「麗香姉ちゃんはずっと大人のお姉さんのイメージやったからなぁ。
まさか…るんが俺よりデカなってるなんなぁ…。」
「勝手に馴れ馴れしく呼び捨てしないでください!
私は君の事なんて知らないんだからね!」
「お前…何も憶えないのか?」
「だからお母さんもさっきから何言ってんの?
はっきり言って初対面の君とこれから一緒に暮らすなんていい迷惑なんだからね!」
「るん!お母さんを亡くして間もない嵐くんの気持ちを考えなさい!」
「あ…。それについてはごめんなさい…。
確かに君は立派よ。
私と同い年で両親を亡くすなんて堪えられないわ。
でも…私は私は嫌な気持ちをちょっとはわかってよね!」
「あぁ…。
俺かて女だらけの相野邸にお世話になるなんて抵抗あるわい…。
出来るんやったら、ずっとここで二人が残した蜜柑畑と養鶏場を俺が守って行きたいわい…。
でも、16の俺はまだ何も世間と戦えん…。
だから、俺が叔母様のお世話になるんは、母さんの遺志でもあるんや…。
ケーコもその方が喜ぶやろうし…。
『相野るん』さん、そういうわけで、これからも宜しくお願いします。特に同級生の君には学校でも迷惑かけるかもしれんし…。」
私より背が低くてぶっきらぼうな態度の従兄弟は、私が出会った同年代の男の子よりも大人で逞しく立派に見えた。
そして私は嵐くんとの過去を思い出せないままでいた。
でもそれは関係ない。
彼は『それがけい子も喜ぶ』からと言った。
彼女さんとの遠距離に堪えられるなんて大人だね…。
「嵐くん…お母さんの温もりが恋しいでしょう?
今夜は叔母さんと寝ましょう」
やめなさい!