「ちょっと、お母さん!何で私まで行かなきゃいけないの?」
都心から遥か離れた山奥を目指して、母は車を飛ばし続けた。
私は全然記憶に無い親戚の葬儀に参加するのは乗り気じゃなかったが、姉達や会社の取り巻き連中を抜きに母と二人でドライブ出来ることは内心嬉しかった。
「いいのよ、あたしだって葬式が目的じゃないんだから♪
社長の立場じゃなかったら、あの女に灰を投げつけてやるわ!」
「やめてよ、お母さん!
まさかその歯止め役に私を連れてきたの?」
私は知っている。
お母さんの横暴ぶりは長女の麗香お姉さんに、そしてお母さんの乱暴ぶりは次女の凛子お姉ちゃんにそっくりだということを。
そして私はそんな女三人に振り回されるパパにそっくりだということを!!
あっ、申し遅れました。
私は相野るん(16)高校一年生です。
そしてこの喪服を着て車を運転してるのが私の母で相野グループCEOの相野桜子です。
そう、あの相野グループってことです…。
「お嬢様」なんて言われたくないんだけどな~。
はい、お母さんがCEOってことは、私のパパは…うん、大方の予想通り婿養子で専務です。
一人娘だったら仕方ない?
ううん、母には三才上の兄が居ました。
でも、伯父は家を出ました。
伯父が相野グループよりも選んだものってのが…。
そう、今向かってる和歌山の山奥です。
お母さんの恨みがわからないでもない。
お母さんは自分のお兄さんが大好きだったらしい。
当然お兄さんがグループを継いで、自分は自由恋愛の末に結婚すると思ってたらしい。
それが突然田舎の女と夫婦になって農業をするなんて言い出したら…。
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「るん、ここで休憩ね♪」
サービスエリアに車を停め、お手洗いを済ませた後で食事を摂る。
フードコートで食べる関西風味のうどんの美味しいこと!
「…たまにはいいわね…貴女とこうやって過ごすのも…。」
前言撤回。私『も』お母さんに似てます。
「お母さんは働き過ぎだよ!
ゆっくり出来るのがお葬式の時だけだなんて…。
ねぇ、さっきの『お葬式が目的じゃない』ってどういうこと?」
「あぁ、るんも知っているように、お兄様が亡くなられてもう8年…。
そして今回あの憎々しき私のお兄様を奪った静が亡くなった…。
一人息子の嵐(らん)君は天涯孤独なのよ。
だからウチで引き取ることにしたの♪」
「そっかぁ。
仕方ないねって…ええ~!?」
続