それは驚くほどの快眠だった。
月並みな言い方だけど、こんなに朝日が気持ちよいとは思わなかった。
今年は例年より雨が多い梅雨期となったが、梅雨の晴れ間は夏より気持ちいいと私は思う。
「おはようございます、島さん。
お待ちくださいませ。もうすぐ朝食の支度が調いますので。」
南部ちゃんは私より早く起きていた。
お風呂から続きで、徹夜のガールズトークを覚悟してたけど、ベットに入った瞬間、二人とも直ぐに寝ちゃったみたい。
「悪いよ、南部ちゃんはお客様なんだから、ホントは私が…。」
「いえ、自分は一晩の宿をお世話になった身、せめてこれくらい…。」
「はいはい、じゃぁ遠慮なく。(泊めたくらいで朝御飯なら、最後まで頂いてたらフルコースね。)」
あぁ勿論、私は親友に対して
「よいではないか、よいではないか。」
「あ~れ~。」
ってことはしてませんからね!
「うわぁ、美味しそう!朝から白米食べるの何年ぶりだろう!」
改めて南部ちゃんの料理の上手さに驚いてたら、
「静かに、伏せて!」
と言って、私の机から数本のボールペンを握り、窓を開けたと同時に…。
「くせ者!」
外に向かってボールペンを投げる。
紺色パーカーのフードを被った男が小さな悲鳴を上げて逃げて言ったらしい。
「きっと私を追った芸能スポーツ記者でしょう。全く…!
あぁ大丈夫です。島さんに迷惑はかけませんから。」
…本当にただのパパラッチだろうか?
私は少し不安だった。
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和夫は自分が助けた女、明美と暫く続いた。二回目、三回目と結ばれることは和夫に取って稀だった。
それは明美がアウトローな仕事に理解があり、明美を追っていたホスト連中が問題なことも関係していた。
「やっぱヤバイよ、カズ。
カズが一番ボコッた麗都(らいと)ってのが、組関係の兄を使ってカズを追ってるって!
ねぇ、悪いこと言わないからウチの父ちゃんに保護して貰おうよ!
父ちゃんも組関連だから麗都の兄貴にだって対抗出来るよ!」
「明美、気持ちは嬉しいが、俺は一匹狼だ…。
ただの構成員で終わりたくない。」
「うん、カズのプライドもわかるけど、死んじゃったら意地も通せないよ?」
明美のこの言葉が決め手となった。
抗争の果ての死も良かったが、生きて友子に再会したい想いも消えない和夫だった。
明美の父は器の大きな親分だった。
和夫を娘の恩人と感謝しながらホストとして保護した。