「美味しかった~。もう、お腹いっぱい~。
じゃあ、ちょっと失礼しますね。」
「あぁ、私も行くです。」
「私も。」
『私も失礼します。』
喫茶ロビンフッドは店内ライヴもするくらいですので、お手洗いも個室が一つあるようなのではなく、百貨店やカラオケボックスの様に大きな鏡と複数の洗面所がある大きなお手洗いです。
このような席上で男女別れての「中間報告」をするには丁度いいです。
女性用のお手洗いでこのような会話をする人間女性を疎ましく思ってたですが、まさか自分が参加するとは…。
「で、お姉ちゃんと私は河野さん推しでいいの?」
「真樹、私は別にそこまでの執着はないです!」
「何よ、はっきりしてよ!でも四人のメンズで誰かって言ったら河野さんでしょう?」
「あの四人なら今のところそうです…。」
「やっぱり…!
真樹さんだけでなく、愛さんもか~。競争率高いわね~。」
メイクを直しつつ、露出の高いチューブトップの服の乱れをチェックする沙代理さん。
やはり沙代理さんも河野さんを…。
「沙代理ちゃんは鬼頭さんに気に入られてるからいいじゃないの~?」
「それにそもそも、この合コンは蔵間さんが沙代理さんに近づく為の合コンです。
沙代理さんは彼の気持ちを汲むです。」
「う~ん、最初はIT関連の社長ってのに惹かれたけど、蔵間さんって年齢以上に子供っぽいし、けっこう上から話してくるよね~。
私から視線が動かない鬼頭さんのがまだマシかも~。」
『蔵間さん可愛いですよ』
「そう、じゃあ明日香姐さんに任すわ~。ワガママ坊やの子守が合ってそうね~。」
「私もあの子はないわ~、ホリが深くて鼻が高くても、文字通り『天狗』だもんね~」
と、私を含め女性陣全員が笑いに包まれた時、
「ふ~ん、女って、やっぱりトイレでこういう会話してるんだ。」
「キャー!!」
声の主はさっき話に上がらなかった妖狐の井成用高さん!
「じょ、女子トイレにまで入ってくるなんて変態!!
逮捕しちゃいますよ!」
と、妹のウリエルこと刑事の真樹が井成さんの手首を掴もうとすると、その姿は消えた。
「そっちは『狐火』の幻。妖狐は幻術の天才さ。」
お手洗いの入り口方向から声が聞こえ、慌てて全員がトイレから出る。
その瞬間、壁に押し付けられたのは明日香さんです。
「あんた…もっと自分をさらけ出してくれ…。」
スケッチブックとペンが床に転がる。