「ええ、捲簾大将(けんれんたいしょう)沙 悟浄は非常に生真面目な性格でした。
宴の席で帝が大切にしていた盃を割ってしまった過ちを深く後悔し、自ら河底に謹慎したのです。なお、日本でこそ『水に棲む妖怪』として河童の姿で描かれていますが、中国の原書には『水中に居た妖怪』であって、河童としては描かれてないのです。」
淡々と語る河野さんです。
前世を知る、知らないは悪魔も妖怪も全くの偶然で、その法則は全く「神の見えざる手」です。
「え~?沙悟浄が河童じゃないって驚き~!」
『知りませんでした。』
沙代理さんも明日香さんも驚きの態度示しているです。
ウリエルだけポカーンとしてるのは中国や日本の文化に詳しくないからに違いないです。
「更に言うなら、河底に謹慎したのは、悟浄は水が苦手だからこそです。
苦手と言っても、天蓬元帥(てんほうげんすい)潴 八戒という天の川水軍の長より遥かに強いのですが。
筋斗雲で飛ぶ悟空が空、八戒が海(川)、悟浄は陸の担当なのですよ。
そして悟浄は常に三蔵と行動せず、ピンチの時に登場する『助っ人キャラ』なんですよね。」
「そうなんだ、面白~い!
でも、八戒が水のスペシャリストなのに、それでも苦手な水中で戦っても悟浄の方が強いって、八戒の立場ないよね~!」
大きな声で笑う沙代理さん。
河童と人魚はやはり相性が良いのでしょうか?
いえ、私「癒しのラファエル」も水属性ですので相性は悪くないはずです。いえ、天使の私が相性とか何を俗物な執着を露呈してるですか?
『八戒はえっちぃ豚おじさんだから苦手です。』
「ハハハ、それは後世の創作が影響してますよ、鳳さん。
確かに八戒は好色が祟り、宴の席で女官に手を出して天界から人間界に追放されましたからね。
しかも、天から堕ちた時に出産間際の母豚の上に堕ちたから、醜い豚の妖怪となってしまっただけですよ。
天界では既婚の女官を誘惑する天然の美少年だったんですよ。」
「そうなんだー!えっちぃおじさんと、えっちぃ美少年じゃ全然違うわよー!
豚の妖怪がえっちぃ美少年って萌えね。昔の中国人恐るべし…。」
「ウリ…じゃない真樹!ここだけ乗っかるなです。」
『年下に誘惑…想像しただけでドキドキです。』
「明日香さんも筆談は証拠になることを考慮するです。」
と、生真面目な河野さんを巡る戦いが白熱しようとするなか、ウェイターからケーキバイキングでのブレイク指示が出た