※以下の( )は、天使と悪魔による超高速に展開される念話(テレパシー)による会話です。
(ちょっと、星明!何で近藤くんがここに来るのよ?
早く彼を取り押さえて!
北御門さんは被害者だからいいけど、部外者に天使の力を見られたら、ミカエル様にお仕置きされちゃう!)
(今、私が飛び出しても無理です!
姉さんが術式を完成した方が早いです。
それにミカエル殿は平気で人間界で能力を使ってましたが?)
(ミカエル様は自分が管理する側だからいいのよ!
ルシファーと鉄板の彼にお仕置きされるなんて駄目よ!
姉として妹の幸せを略奪するような…。)
(何の心配をしとるんですか~?
映像付きの念話を送って来ないでください!
誰が姉のそんな姿を見たがりますか!
いつから天界はそんな背徳的になったのですか!)
(ごめん、ごめん。
うん、今さら仕方ないわね。
近藤くんを気にしないで虎徹を無力化させるわ。)
以上、超高速念話終了。
「『みね』よ、汝の還るべき宙(そら)は、
永遠(とこしえ)の黄昏に潜む
刹那の暁に見出だされよう。
Ω・レクリエム。」
唄。
それは天使の最強の技であり、攻撃にも防御にも、治療にも使える。
大天使ウリエルが唄う鎮魂歌は、妖刀と化した虎徹から、『おみねさん』の霊の分離に成功させた。
虎徹から解放され、まず正気を取り戻したのはバティンだった。
「わ、私は…?
くっ…悪霊如きに洗脳されるなどとは何たる失態!
サタン様、この悪霊の始末は…。」
「止めよ、バティン。
お前はこのフロア一体に人払いの方を頼む。」
「ハッ…直ちに!」
バティンは正気を取り戻しても、次に正気を失うのは普通の人間である北御門瞳と、近藤優であった。
人外のバトルは何とか許容出来ても、刀から富士色の着物を着た、目に見える女性幽霊が現れたら、冷静さを保てる人間の方が少ないだろう。
「ば、化け物?」
「イヤー!本当に刀に憑いた霊が出た~。」
恐怖に怯える二人をよそに、実体化した「幽霊おみね」は一世紀半ぶりの外界に歓喜した。
「なんて心地よい感覚…。
神様…ありがとう。
でも、私はまだ極楽へは行けない…。
本物の虎徹を届けないと…。
あぁ、そこに居られますは、近藤勇様!本物の、本物の虎徹を…。」
「ぼ、僕ですか?
確かに僕の名字は近藤ですけど…。」
「刑事さま、彼女は百年以上も後悔し、さまよい続けた悲しい霊です。慈悲を…。」