「さぁ~てと。ちゃっちゃと成仏させましょうか悪霊さん♪
バティンさんは弟の大切な部下だから、勝手に肉体を支配されたら困るのよ!
星明、私が術を唱えるから、貴方は北御門さん守る結界を張ってて。力を封じた人間の肉体でも、それくらい出来るでしょう?」
普段はやる気のない女刑事として有名な宇都宮真樹だが、一度「仕事モード」として覚醒すれば大天使ウリエルの本領発揮である。
「はい、それくらいは大丈夫です。
やはりウリエル姉さんを連れて来て良かった…。
人間の肉体の余では妖刀に憑かれたバティンとは互角に持ち込むのが精一杯で、浄化や封印まではたどり着けぬ…。」
きびきびと自分に命令する姉に羨望の眼差しを送る佐田星明こと大魔王サタン。
魔界に君臨する支配者である自分が、いくら天使である姉とはいえ、命令されるのは不思議な気分であった。
それは人間の恋人、落合奈々子の影響である事は、星明自身もわかっていなかった。
天使としての「理力」を解放しだしたウリエルから目を離し、佐田星明はもう一人の人物に声をかけた。
「なるほど…。『人間バラム』ではお互いの正体が分からぬわけだ…。」
「あの雑貨屋の店員がサタン様であられましたとは…。
この非礼は何卒…。」
恐縮しまくるバラムこと原宗時。
主君であるサタンをただのアルバイト店員とみなし、
「君では話にならん」
と言ったからだ。
「…よい…。お主の呪術も予言も人間故のこと…。『人間として』この事態をよく凌いだものだ。
余に詫びる気があるなら姉さん、イヤ、大天使ウリエルに魔力のサポートしろ…。」
「はっ、直ちに…。」
バラムがウリエルの背中から魔力を供給しはじめた頃、ウリエルは言霊を唱えはじめた。
「乞う。
宙(そら)の下を統べる父の父よ。
迷える魂に進むべき光明を。
過ぎたる妖かしの力に及ばざる路の結末を。
大天使ウリエルの名の下に
右手に悲しみを
左手に慈しみを
虎徹に宿りし『みね』の霊よ、汝の還るべき宙(そら)は…。」
それはバラムが仮眠室で行うとしていた、儀式より遥かに強力な物だった。
あと少しで虎徹を無力化出来る所だったが…。
「バタン!」
大きな音で入り口のドアが開く!
威勢よく入ってきた若い警察官が銃を構え、
「原宗時!銃刀法違反の容疑で逮捕…して…いいのかな?宇都宮先輩?」
近藤くんの馬鹿!このタイミングで勝手に入って来ないで!