※本日は二回同時更新です。30を読んでない方は先にそちらを
****
真理亜の起死回生同点タイムリーが飛び出した。
決め球のスライダーを、センターオーバーするほど飛ばされ、打たれた徳川実業ナインはもう笑うしかなかった。
それは勝利のみに固執してた自分達が何かを思い出させるような真理亜のバッティングだった。
「やられちまったなぁ、牧野。
カーブかストレートなら打ち取れたかもしれんが…仕方ないな。」
「県予選でも俺のスライダーをあそこまで完璧に叩いた打者は居ねぇよ!
逆に気持ちいいな。」
「今日一番いい顔してるぜ牧野!」
「あぁ、サヨナラ3ランじゃなくて安心したぜ。」
「気にするなと言っても無理だろうが、応援してる女子高生が飛び入り参加で代打に出た以上、この練習試合に記録も高野連もクソもねぇ。
よってたかっての球遊びさ。」
「球遊びとは言いますねぇ、千石キャプテン♪
俺が打たれた時のお前の投げやりな態度は嫌いじゃねぇよ。
どうせ球遊びなら、次の高坂を敬遠して延長戦でって雰囲気じゃねぇな。」
「当たり前だ!打ち取っての延長なら値打ちものだが、勝負を避けて延長で勝っても意味がない。
向こうはもう投手が居ないだろうし、仮に高坂が投げても、捕れるキャッチャーも居ない。」
「あの姉さんが投げるかもな?」
「……。」
「…あの制服でか…?」
「……。」
「……。」
「…あるかもな…。」
「……。」
「よし、楽しみが出来たな。
点数やランナーは気にせず、思いっきり勝負しようぜ!」
『おお!』
****
「え~?最後の打球って、道路まで飛んでたったの~?」
「うん、オーバーフェンスどころか、サヨナラ場外ホームランだったよ。」
「…僕に投げた球全てストレートでしたよ…。
まるで真っ向勝負じゃないといけないような…。
牧野さんは九回まで投げてるピッチャーとは思えない気迫でした。
投手交代や、敬遠の策もあったでしょうが、それを選択しなかったのは王者の矜持でしょう…。」
「それでも打ってほしい場面でホントにサヨナラ場外ホームラン打つんだから高坂くん凄いよ~!
結局、四安打三本塁打五打点の大活躍じゃん!」
「…僕達は勝利により得たモノが…。
しかし、徳川実業は負けてより多くのモノを得たかもしれません。
いつまでも勝利の余韻に浸ってはいられません。
ですが、今日くらいは祝勝会でバカ騒ぎしましょう!」