オーバーフェンス29試合編23 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「タイム!」

間を取ったのは北条学園からだった。

ネクストバッターズサークルで素振りする高坂漣が、三好真理亜に作戦を授ける為だ。

対する徳川実業バッテリーも、タイムがかかったのを確認して、内野陣ともどもマウンドに集まる。

「牧野、また悪いクセが出やがったな!
バッターが女子高生だから意識し過ぎてカーブがすっぽ抜けやがって…。」

捕手千石からのキツい叱責。
集まった内野も同調する。

「その前の悪送球といい、牧野は土壇場でメンタルが弱いんだよ!
ウチが県内だけでなく、全国でも常勝を積み重ねるにはもう1ランク上を目指さないと…。」

「わかってる!わかってるよ!
デッドボールにならなくて良かったよ…。」

「あぁ、ユニフォームも来てない女子に当てるわけにはいかないよ…。」

「じゃあ、敬遠するか?」

「ええ?」

千石からの驚きの提案。
これは勿論、ピンチになると気持ちが逃げ腰になる牧野にハッパをかける為だ。

「あの姉さん相手に投げにくいなら、敬遠すればいい。
でも次打者はあの高坂って一年だ。
どうする?二本塁打を含む三本打たれてるリベンジをしたいって、理由なら一応格好はつくぜ。」

「おい、千石…。」

「牧野、俺はどっちでもいいぜ。
但し、二人とも敬遠って策はない!」

「わかったよ、千石。
野球は確率のスポーツだ。
より打ち取りやすい相手に全力を注ぐのは当然だ。
余計な邪念を捨てて、あの女子を打ち取るさ。」

「それでいい。牧野、お前は球のコントロールは一流だが、気持ちをコントロール出来れば超一流だ!
いいか!甲子園が目標じゃない!
甲子園優勝が目標なんだ!」

『おう!』
****
「高坂くん、ホントに真っ直ぐがそこに来るの?」

「ええ、貴女が女子ということに気を使い、内角はないでしょう。
外角低めに一番速い球を必ず投げて来ます!
チャンスは一回限り。
牧野さんの肘が見えたら、一、二の、三のタイミングで打ってください!変化球は気にしないで。」

「うん!肘が見えたら一、二の、三ね」

「プレイ!」

(牧野!いいな!)

(ああ!カーブのすっぽ抜けで腰が引けたなら外角の速球は届かないはず)

(肘が見えたら…一、二の…三!
ホントに来た!」

「カキン!」

ドンピシャのタイミングで振り抜いた真理亜!
ライト線を鋭いライナーが襲い…。

「ファール!」

「うぉ!ヤバ!」

「…敬遠しよか?」