「嘘?聖バーバラの制服着た子が何で三人も?応援?
しかも…一人は凄い美人で胸もデカ…!」
「ヤバいよ、きっとあの真ん中の子、高坂くんの彼女だよ~!」
「やだ~!美男美女カップル反対!!」
北条学園の高坂漣ファンクラブは戦々恐々としていた。
噂に名高いお嬢様学校の生徒の登場に、ファンクラブという名の「停戦条約」は無に帰そうとしていた。
そして何よりも女子という生き物は、決して負け戦を挑まない者である。
勝てそうな相手にのみ、集団で攻撃するか、集団に取り込むのである。
今目の当たりにした外部からの三人が、その中でも一際目立つ凛とした三好真理亜の佇まいが、高坂漣を前にキャーキャー騒ぐだけの女子のアイゼンティティを揺るがした。
が、妥協はしない女子達だった。
「ほら、挨拶してきなよ~!」
「え~?何でこういう時だけ私なの~?」
「いいから行きなさいよ、柚子葉!
高坂くんと仲良くなりたいなら気合い見せなさいよ!」
「わ、私は別に…。」
背中を押された一人の女子が聖バーバラの三人組に近づき、挨拶する。
緊張した様子に逆に親近感を憶える。
「あ、あの…こんちは…。」
「はい、こんにちは。というより、まだおはようごさいますね♪」
「そ、そうですね、あの…私…。」
顔を真っ赤にして目線を下げる女子に、優しく微笑むのは三人組のリーダー格の三好真理亜だった。
「ほら、頑張って。
しっかり私達の事聞き出さないと、スパイの役目失格だぞ?」
「な、何でわかったんですか?ご、ごめんなさい!」
「伊達に女の世界で二年以上も集団生活してないって!
こっちをチラ見しながらヒソヒソやってりゃ、このマリア様にはお見通しよ!」
三好真理亜の連れで、活発なタイプの篠山五月が、この気弱そうな女子に話かける。
「マリア様?って…。まさか…?
わ、私、朝倉柚子葉って言います!
聖バーバラのマリア様って…まさか、三好くんのお姉さんですか?」
「ええ、三好秋彦は私の弟よ。
ふ~ん、秋彦ったら、いつの間にこんな可愛い彼女を?」
「ち、違います!!私は別に…。」
慌てて必死に否定する姿に初々しさを感じながらも、三好真理亜は生来のお節介を忘れてなかった。
「そうね、人気者の高坂くんとやらを追っかけてるフリをしてれば、『その他大勢』に混じれて安心だもんね?
フフ、大丈夫よ。弟の応援に来ただけってボスに報告なさい。安心するから♪」続